スキーはもはや高値の花? ニセコのリフト券は1万円超え、インバウンドと設備切り替えで
インバウンド(訪日外国人客)らに国際的な人気を誇り、北海道西部にあるニセコ地域のスキー場の1日リフト券が初めて1万円を突破した。施設の刷新に伴う価格転嫁が主な理由だが、新型コロナウイルス禍が明けて以降、外国人向けの商品・サービスは高額化しており、SNSでは「貧乏な日本人は来なくてけっこうということなのか」などため息も。低い経済成長が続く中、バブル期以降、一般化したスキーやスノーボードといった余暇は高値の花になりつつあるのかもしれない。 【ランキング】訪日外国人の都道府県別訪問率、トップとワーストは? ■年々1000円アップのリフト券 ニセコのスキー場は標高1308メートルのニセコアンヌプリ山の裾野に広がる。同山の東から南東の倶知安(くっちゃん)町に「ニセコHANAZONOリゾート」と「ニセコ東急グラン・ヒラフ」、南側のニセコ町に「ニセコビレッジスキーリゾート」と「ニセコアンヌプリ国際スキー場」がある。パウダースノーや林間コースといったスキーそのものだけでなく、ふもとに広がる温泉やレストラン、露天風呂などが観光客をひきつける。 値上げをしたのは、4スキー場の共通リフト券で、大人1日が1万500円。2021~22年が8100円、22~23年が8500円、23~24年が9500円と年々値上げしており、今シーズンについに1万円を突破した。人件費や燃料費の高騰だけでなく、リフトの刷新に経費がかかり、価格に転嫁せざるを得なくなったためだ。 背景の一つはインバウンドの激増だ。倶知安町の統計によると、昨年1年間の宿泊者数はのべ57万3000人と過去最多を記録。スキー客がほとんどを占める冬季(12~4月)で見ると、宿泊を伴う観光客の8割は外国人が占める。季節が逆のオーストラリアや雪が降らない香港やシンガポールからの訪日客がスキー場に集まる。 ■オーバーツーリズムだけでなく グラン・ヒラフの担当者によると、殺到する外国人スキー客による混雑を避けるため、4人乗りのリフトを10人乗りのゴンドラに付け替えた。来季以降はさらに上層のリフトの付け替えを行う予定だという。 観光客の集中に伴うオーバーツーリズム(観光公害)以外の側面もある。国内のスキー場のリフトなどのインフラは多くがバブル期のもの。さびるなど耐用年数が限界に近づくことに加え、メーカー側の部品の備蓄が底を付き、新製品に切り替えざるを得ないこともあるという。
東京ディズニーランドの1日入場券は変動価格で7900~1万900円。安い時期のディズニーランドよりもニセコでのスキーは高値になる。関係者は「移動も含め『高いな』と思うユーザーの目線も理解できる。寒風を防げるゴンドラやゲレンデを一望できるレストランなど見合うものを用意して、来てくれた方々に楽しんでもらえるよう努力していく」としている。