【2024年問題 地方港を考える】
荷主と運送双方にメリット。デジタルPF活用
物流の「2024年問題」に伴い、地方港への注目が高まっている。貨物の発着地に近い港を使えば荷主は長距離トラック輸送を削減でき、運送会社も配送効率を高められる。トランシップ(積み替え、TS)の影響が懸念されるなどデメリットもあるが、リスクを最小限にとどめるのに有効なのがデジタル・プラットフォーム(PF)の活用だ。国際物流PFを提供するShippio(シッピオ)の事例から、持続可能な物流に向け、地方港の活用を中心に24年問題対策を見る。 4月1日、働き方改革関連法と改正改善基準告示のドライバーへの適用が始まった。時間外労働は年間960時間、年間拘束時間は3516時間から原則3300時間に制限される。労働時間の減少により、問題を放置すれば24年には14・2%、30年には34・1%輸送力が不足するとNX総合研究所が推計するなど今後は安定輸送が危ぶまれる。国内運送費用の上昇も予想される。 この24年問題は主に国内物流の問題ではあるが、国際物流も無縁ではない。輸出入貨物の国内トラック輸送に影響を及ぼす。ドライバー不足の中で荷主と物流事業者、運送会社が協力してムダを排除し運行効率を高め、限られた労働時間を最大限活用していく必要がある。 同問題は特に長距離輸送への影響が大きい。1日に走行可能な距離は500キロメートルから450キロメートル以内になるとシッピオは試算。ドレージ(海上コンテナ陸送)に当てはめると、港と集配地の往復が必要なため日帰り運行できる集配地は港から225キロ圏内になる計算だ。例えば東京港を基点にすると、北は福島県いわき市や栃木県那須塩原市、西は長野県上田市、静岡市などが限度になる(図)。 そこで、シッピオは国内物流の上流に当たる国際物流からの改善を提案する。長距離ドレージの削減に有効な選択肢として挙がるのがまず、地方港の活用だ。これにより、「荷主と運送会社の双方にメリットを生み出せる」とシッピオの菅志織パートナーセールス・マネージャーは解説する。 荷主はドレージの距離を短縮した分、運送費用を抑えられる。運送会社は輸送距離が片道100キロ未満になれば車両を1日複数回転(往復)させられる上、混雑する主要港での荷待ちがなくなり、ドライバーの労働環境を改善できる。むろんCO2(二酸化炭素)の排出削減などの環境負荷軽減効果も見込むことができる。 豊通マテリアルはBCP(事業継続計画)対策も狙い、昨年12月に南米発いわき市向け輸入貨物の荷揚げで京浜港に加えて小名浜港の利用を始めた。リードタイムは約60日から約65日に延びたが、ドレージ費用は5分の1程度に低減した。 フランスベッドは中国・蛇口発静岡県掛川市向けの輸入港を名古屋港から清水港に切り替えた。リードタイムは2日延びたがドレージ費用は3割程度低減。海上運賃はほぼ変わらなかったためトータルコストの合理化につながった。 ■データを基に判断 新規ルートの利用をためらう荷主も少なくないが、シッピオはPFのシミュレーション機能や各種データを使い、地方港の利用提案に力を入れている。荷主はフォワーディングを委託していればPFを利用でき、PFのシステム単体での利用も可能。 海上輸送については一般的に地方港発着の運賃は高くなるが、自治体などの補助制度を利用できる場合も少なくない。PFのデータにより在庫計画の精度を高め、コンテナのフリータイムを短縮する分、船社と運賃交渉が可能になることもあるという。 リードタイムについては釜山港や国内主要港でのTSが入ることが多く、直航便でも頻度が少ない分、長くなる傾向にある。TS港の混雑などでリードタイムを読みづらくなる懸念もある。 これに対して、シッピオのPFでは経由便でもリアルタイムの輸送情報可視化を提供する。第2船が決まり次第情報が反映され、遅延があってもいち早く検知し、納期の調整など次の対応に迅速に移ることができる。過去の実績を計画立案や今後の対応の判断にも活用できる。