消費者庁も注意喚起! 初心者大家の「サブリース契約」に潜む「想定外のリスク」とは【弁護士が解説】
サブリース契約の落とし穴(2)…「逆ザヤ」事件
サブリース会社は、オーナーから借りた物件をさらに高額で転借することで利益を出します。たとえば、オーナーから8万円で借りた物件を10万円で転借すれば、2万円の利益が残ります。 しかしここ数年、本来適正賃料よりも高い家賃保証の支払いが組まれた物件が販売されていることが発覚しました。これは「逆ザヤ」であり、当然ですが、サブリース会社の経営も悪化していきました。 実は、サブリースだけで事業として収益を上げ続けるのは簡単ではありません。本来は、サブリースによる薄い利益を少しずつ積み上げ、数が増えれば、大数の法則によってリスクも平均化でき、利益が出る…という仕組みです。 では、今回の件において、サブリース会社はどのタイミングで稼いでいるのかというと、かぼちゃの馬車事件は建築費で、逆ザヤのサブリース事件は不動産の売却金額で…というように、不動産の売買のタイミングで大きな利益を得ています。 つまり、サブリースはあくまでも不動産売買で儲けるためのオマケであり、「サブリース契約による空室保証で安心!」という付加価値をつけ、不動産の販売を促進することが目的なのです。 サブリースで多少の赤字が出ても、不動産売買のときの手数料等で大きな利益を得ているため、結果的には黒字になる、というのが不動産会社の狙いなのです。
大家業には「リスクをとる覚悟」が必要
サブリース契約は本来、オーナーの懸念である「空室リスク」をサポートするものであり、その点ではよい制度だといえるでしょう。 しかし、上述のようにトラブルも多く、消費者庁も注意喚起をしています。 賃貸経営をする以上、サブリースの安心感を求めるよりも、空室リスクを踏まえたうえで大家業をする覚悟が必要だと考えます。 ハッキリ言えるのは「完璧な物件」というものはないということです。条件がよければ、そのぶん値段も高くなります。利益関係以外の点では、許容できるリスクであれば受け入れるのもありです。しかし、リスクを認識せずに不動産を購入してしまうと、想定外の損失が発生してしまいます。 老朽化や高低差、再建築不可といった弱点を知ったうえで投資を行う投資家はいますし、それらをむしろ強みにしていることもあります。弱点により、物件が安くなっているケースも多くあります。 しかし、不動産投資は価格を攻めないと収益が上げられないものです。物件の弱点を理解したうえで、自分の時間と能力でどこまで対応できるのか、戦略を立てて挑戦することをお勧めします。 山村法律事務所 代表弁護士 山村暢彦
山村 暢彦
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