決算迫る大手銀行株に先高観、日銀利上げと持ち合い解消が業績追い風
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズで日本株運用責任者を務める井上純一氏とポートフォリオマネージャーのジュリアン・マクマナス氏は、持ち合い株解消の進展による明確なメリットは、売却益が自社株買いの原資として充てられることが増えることだとリポートで指摘した。
ただ市場では、先の衆議院選挙で自民・公明の与党が大敗し、過半数割れとなったことで金融緩和の継続に前向きな勢力との政策協議の必要性も増しており、政治の不透明感が日銀の利上げタイミングを遅らせるとの見方も出ている。与党側も党勢回復のためには有権者に受けの良い政策を進めざるを得ず、債務負担の増加につながる利上げは容認しにくい現状だ。
ナティクシスのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「日銀による急速な利上げ期待を背景に、銀行セクターに熱狂的になっていたかもしれない」と述べ、インフレ率の落ち着きや米国が利下げ方向に政策転換を図ったことで日銀の「利上げの余地は狭まっている」との認識も示した。
とはいえ、投資家の間で銀行株の先高観が根強いのも事実だ。JPモルガン・チェースのリサーチ部門でグローバルヘッドを務めるジョイス・チャン氏は、日銀にはまだできることがあると考えており、日本の銀行株の上昇はまだ続く可能性があるとみている。
各行の増配の動きも投資家が引き続き銀行株に対する興味を維持している一因だ。モーニングスターのアジア株式調査部ディレクター、ロレイン・タン氏は「日本の銀行株は年初来で上昇しているが、われわれがカバーするアジアの銀行株をアウトパフォームしているわけではない」ため、「上昇余地がある」と言う。
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Aya Wagatsuma