「1人発熱したら翌朝2人発熱。集団生活である以上、感染症は絶対起こるもの」大阪の保健師が見た避難所 印象的だったのは「仕切りの無い避難所。顔を見て安心感」【石川県能登半島地震】
1月1日に能登半島を襲った地震。避難所生活を余儀なくされている人々に、公衆衛生の専門チームとして、大阪府堺市から保健師ら4人が派遣されています。その第1陣として1月7~8日に石川県能登町で活動した保健師、堺市健康推進課の川本喜和(かわもと・きわ)さんに話を聞きました。 【写真を見る】避難所でシートを貼り飛沫防止対策されたトイレ
避難所の衛生状況は“全く未把握”
(保健師 川本喜和さん)「能登町で保健活動をしたのが堺市と、大阪市と、福島県のチームでした。(当時)避難所が町で80ヶ所弱ほどありまして、まだ全然状況がわからない段階だったんです。健康状態や、物資が足りているのか、もう全く未把握だったということで、まずは全部巡回しようと、各チーム手分けして避難所をまわりました。行った先で健康状態が悪い方がいらっしゃらないかとか、感染対策が取れているかって確認して、少しお伝えしたりというような活動をしました。」 川本さんによりますと、避難所ではトイレの前に自宅から持ち寄ったアルコール消毒液を置いたり、炊き出しの際に、貴重な水でちょっと手を洗って、アルコール消毒をして調理をしたりと、避難者が自主的に感染対策を取っている状況だったそうです。 トイレは仮設のものや学校備え付けのものなどを利用していましたが、断水のため、川の水やプールの水で流していたといいます。一部の避難所では、自主的にトイレにシートを貼って、飛沫対策をとっていたところもあったということです。
水で手を洗えないことが感染スピード早める原因か
しかしこうした自主的な感染対策を取ったとしても、『水で手を洗えないことがネック』だったと話します。 (保健師 川本喜和さん)「発熱症状が出ている方もいらっしゃる状況でした。特に手洗いができないっていうことで、どうしても拡大のスピードが速いのではないかと懸念されます。(避難所では)集団生活で寝食をともにしていますので、1日目に1人発熱されて、翌朝に2人また発熱されて、と立て続けに起こってきているように、やはり拡大しやすい状況だと思います」 川本さんらは、発熱者が出ている避難所では、できる範囲で隔離と換気を心がけるようアドバイスしました。 (保健師 川本喜和さん)「例えばゴミ袋を使って、簡易に飛沫が飛ばないよう仕切りを作ってみるとか、もちろんマスク着用、それから寒い地方で換気がどうしても皆さん忘れてしまうことがあるので、1時間に1回は2か所開けていただくというようなこともお伝えしました。今後、胃腸炎が増加してくることも予想されますので、その際にアルコールではなく次亜塩素酸を使った消毒方法っていうのを、資料と消毒液をお渡ししたりなどしました」 避難所を回る中で、特に印象的だったことが。 (保健師 川本喜和さん)「一番強く感じたのは地域の力がすごく強い。住民さん同士の繋がりが非常に強いっていうのを感じました。最初の頃は物資も届かない中で、それぞれの家庭にあるものを持ち寄って、灯油なり食材なり、消毒物品も家にお持ちの方いらっしゃったので、そういうのを持ってきて過ごされている」 さらに、避難所に”仕切りが無かった”ことも印象深かったといいます。 「(物資が)無いから仕切りができないのではなくて、顔が見える関係に安心感を覚えてらっしゃる方が多くて。そこは非常に印象に残っています」