古今東西 かしゆか商店【行田足袋】
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回の行き先は日本有数の足袋の町と呼ばれる埼玉県行田市。熟練職人たちが作り上げる「行田足袋」と出会いました。 【フォトギャラリーを見る】 和服を着た時のぱりっとした気持ちよさを支えているのが、真っ白な足袋。その歴史を調べていたら、埼玉県行田市に「行田足袋」という伝統工芸品があると知りました。 「始まりは江戸中期。今の行田市にあたる忍藩周辺で木綿生産が盛んだったこともあり、武士の奥方や町人の副業として発展しました。明治期後半には庶民にも浸透。昭和初期には行田だけで8400万足の足袋を生産していたそうです」
そう話す〈きねや足袋〉代表の中澤貴之さんの案内で工場内へ。昔の足袋は紐で結ぶレースアップスタイルだったこと、足袋独特の留め具「コハゼ」は西欧の服のホックを参考にしたと思われること、昔も今もサイズが細分化されていて、同じ23cmの足袋でも足幅や甲の高さによって5、6種類揃うこと……などを教わった後は、ジャキジャキジャキと足踏みミシンの音が響く作業場を見学します。
「木綿地の場合、光沢のある表地、吸湿性のある裏地、厚手の底地という3種類を使い分けるんですよ」 と中澤さん。それぞれの生地を10層ほどに折り重ねたら、パーツごとの金型で裁断。パーツは「親指側の表/裏」「四本指側の表/裏」「底布」と、片足分で5種類、両足で10種類に分かれています。
それらを部分ごとに縫製するのですが、特に惹き込まれたのがベテラン職人さんによる「つま縫い」です。つま先の急な曲線に沿ってイセ(小さな山)を作りながら立体的に縫う工程で、ミシンは古いドイツの靴縫い用ミシンを改良したもの。足でペダルをコントロールしながら右手でくるくるとハンドルを操り、左手だけで生地を小刻みに動かして……華麗なマルチタスクに目が釘づけです。
最後は仕上げ。専用の木工道具を使って中表に縫った足袋をひっくり返しながら、「こぐ」という作業で仕上げます。足袋の中に木型を入れて踵の部分を木槌で叩いたり、つま先の凸凹をならしたり。 「履き心地や耐久性を左右する大切な工程です。足の丸みに合わせて形を整えることで、履いた時の違和感をなくし、包み込まれるようなフィット感を生むんです」