「そうして騙されたのが、この私なのです」…被害者である経営コンサルタントが語る、複雑すぎる”入れ子構造”の「地面師詐欺」
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第67回 『「印鑑登録証の偽造」よくある地面師詐欺から一変…土地取引に応じた経営コンサルタントが語る、4億円取引後に起こった“まさかの展開”』より続く
二重のなりすまし
いつの間にか自分の不動産の名義が変わっている――。本物の春山がそう気づいたのは、土地建物の移転登記から3週間ほど経った後の4月末だった。 「春山さん、今日はおられますか」 それまで何度か自宅を訪ねてきたことのある不動産ブローカーが、やって来た。春山はたまたま自宅に戻ってきたところだったという。 「驚きました。春山さん、ここを手放したのですか」 そう聞かされた春山にはもとよりそんな覚えがない。 「ほら、所有権が移転していますけど」 登記簿を見せられ、事実を知らされたという。春山はすぐさま懇意にしていた住友不動産の営業マンに調査してもらった。すると、地面師詐欺が判明した。 このときすぐに警察が動けばよかったのかもしれない。だが、少なくとも登記書面上はそのままだった。すると地面師たちは、予想外の動きを見せた。
もう一つの地面師詐欺へ
「物件の新たな所有者となった千葉県の建設業者が転売したがっている」 不動産ブローカーの間でそんな新たな売買話が持ちあがった。それは意図的な情報操作だったのかもしれない。 「その取引の仲介に乗り出して騙されたのが、ほかでもない、私なのです」 先の経営コンサルタントが、こんな驚くべき話をする。ここからもう一つの地面師詐欺が発生したという。 「すでに物件の所有権が移っているため、私の交渉相手は千葉県の建設会社でした。で、千葉ではなく会社が借りているという虎ノ門の貸し会議室で社長と会ったのです。名刺交換をして、それからです」 『信じていた社長まで「真っ赤なニセモノ!?…闇に葬り去られた「二重のなりすまし詐欺」の真相とは』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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