五輪エンブレム撤回 会見(3)ネット社会でデザインの独自性確保は難しい
取り下げたいと申し出た時の佐野氏の様子は?
TBSテレビ:TBSテレビのコバヤシと申します。確認なんですけれども、佐野さんが自分のほうから取り下げたいとおっしゃったという説明がありましたけれども、そのときの佐野さんの具体的なご様子。例えば疲れ切った様子だったのか、何か怒っているような様子なのか、具体的なご様子が分かればと思います。 武藤:怒っているといったようなことはまったくありませんでした。冷静な意見交換ができたと思います。佐野さんが一番訴えたいと思ったのは、これが模倣であるから取り下げるということでは自分は納得できませんということを強く言われました。私はデザイナーとしては当然そうだろうと思います。しかし、自分がオリンピックに関わるというのは昔からの夢であった、憧れであった、それでやっと関われたと。これは当選したときにもそうおっしゃっていましたけれども、それが自分のロゴによって、むしろオリンピックのロゴ、国民からサポートされるべきオリンピックのロゴに、かくも批判が出てきたということは、むしろ取り下げてオリンピックを成功させてほしいという気持ちのほうが強くなっています、ということをおっしゃいました。佐野さん個人の様子という、外見的な様子はなんら、普段と同じでありますけども、その思いは非常に印象深く、私は思いました。お答えになるかどうかあれですけれども、そういうことであります。 司会:それでは真ん中の列の一番前の方。 ニコニコ動画:ニコニコ動画の七尾と申します。よろしくお願いします。ありがとうございます。当初の受賞会見から佐野さんは、コンセプトがオリジナルだということを強調されておりました。とおっしゃっていますけれども、そもそも劇場と五輪とでは目的が違う時点で、コンセプトが違うのは当たり前だと思います。商標登録についてはその作品がオリジナルかどうか、ほかに形状などが似ているものがないかが問われるんであって、そもそもそのコンセプトについては、メインとしては審査の対象にそもそもならないのではないかという声があります。国際商標登録の際にはコンセプトを審査する項目があるのかという点と、その辺りも含めて、佐野さんご自身が直接国民にお答えするべきだという声があるんですが、今回、佐野さんが会見に出席されないのはご本人の意向によるものなのか、それとも組織委員会のお考えによるものなのか、はたまた組織委員会として佐野さんの会見の場を設けるのか。お願いします。 武藤:取り下げたということは組織委員会が取り下げると、結果的にはそういうことであります。佐野さんの考え方は私が縷々説明いたしました。従って、この席に佐野さんがいなきゃならないというふうには、私どもは判断しませんでした。佐野さんがまたどういうふうに対応されるか、これは佐野さんのご判断だろうというふうに思います。 それから、コンセプトの話は、私は専門家でないので詳しい、ご指摘のあったことに対してお答えするだけの知識はありませんけれども、永井さんによると、実はこういうものに対しての考え方はここ何年かの間にずっと違ってきたということなんですね。もう、いろんなアイデアが次々と出てきて、コンセプトの、こういうエンブレムにはもう類似品がたくさん出てきてるわけなんですね。その類似品が似ているからといってアウトということがデザイナーの創作性というものを、それは育てるんだろうかと。結果的に似てしまったからあなたは責任を取れっていうのは、デザイナーを育てないのではないかということから、コンセプトを重要視するようになったそうでございます。結果的によく似てても、まったくコンセプトが違うということをもって、それは違うというふうに説明されるものがたくさんあるというふうに伺っております。 槙:商標調査の段階は形だけでやります。形だけです。 司会:それでは一番、こちら側の列、一番後ろの方、ブルーのシャツの方、ずっと上げていらっしゃいますので。どうぞ。 TBSテレビ:TBSテレビのハスミと申します。よろしくお願いし。すいません、先ほどから説明があるんですけれども、どの部署に、どなたに責任があるというのがまだちょっと曖昧で。。 すいません、もう一度最初から質問させてください。TBSの蓮見と申します。先ほど来、一生懸命説明をされている姿は印象としてあるんですけれども、どなたが、あるいはどういったセクションで今回問題が生じたのか、そして責任の所在があるのかというのがいまいちよく分からないところがあるんですね。 なぜこのような質問をするかといいますと、今、ネット情報社会、インターネットの社会の中で今後こういった事例はありうると思うんですが、国民の理解も得ながら、あるいはデザイナーとしての意向や尊重、そういったものもくみながらと、両方の気持ちを得ながら1つに選定するというのはなかなか難しい作業だと思うんですが、この審査委員会が難しい判断なのか、それとも理解しようと、できなかった人たちのせいなのか、それともそれをうまく取りまとめられなかった組織委員会なのか、あるいはもともとデザインを提供した佐野氏、原作者の問題なのか、これはどのように振り返って、そして今後どのように生かしていきたいと思われていますか。 武藤:今、ご指摘のあったような、分解してどこかの1箇所に責任があるとかって、そういう問題とは私は理解しておりません。これは大勢の人が関与し、いろんな手続きを取って、私はこの問題をいかに進めるかというのが非常に大事だと思います。誰か1人がいいから決めたんだというようなことであってはならない。むしろいろんな形で専門家が関与して、みんなが責任を分担してこういう結論を出すと。誰か1人が責任を持って結論を出すということではないだろうというふうに思います。 もちろん、組織としてはそのトップのものが責任を持つんだという論理は分かりますけれども、今ご指摘のように、分解してどこかの誰かに責任があるのかという、そういう議論はちょっと私はするべきでないし、またできないだろうというふうに思います。 それからご指摘のように、このネット社会でデザインの独自性というものをどうやってうまく確保していくのかっていうのは難しいではないかというのは、まったくそのとおりだと思います。私もとても難しいと思います。これをまた次、次回をやったときに同じ問題が起こる可能性は、おっしゃるとおりあると思います。それをどうしたらいいのか。これはわれわれも考えたいと思いますけれども、いろんな方々のお知恵も拝借しながらですね。 今までは、例えば1964年の当時はこんな状況はありませんでしたので、もうちょっと伝統的なやり方で良かったんでしょうけれども、今日のネット社会においては今までの伝統的な、専門家が集まって決めればいいといったようなことでは必ずしもないというふうに考えるべきなのかもしれません。それはご指摘のことはよく分かりますので、その点をどうしたらいいか、われわれは考えていきたいというふうに思っております。