美容外科医の投稿で大炎上…国内外で異なる「献体」事情とは 医学において“新鮮な遺体”が解剖できる意味深さ
■なぜ美容外科医に解剖が必要なのか、異なる倫理観とは
医師になる過程で、解剖は通る道だ。高須氏の場合、「まずは学生の時、2年生の時と6年生の時に解剖した。2年生の時は基礎の解剖学で解剖させていただいたので、筋肉も内臓も脳も、それぞれを切って中を展開して開けてということを勉強させていただいた。6年生の臨床の解剖は、臨床に沿っての解剖だ。例えば鼠径ヘルニアだったら、精巣のどこを通ってヘルニアになるのかとか、そういう細かい勉強を医学部で2回解剖させていただいた」と経験を述べた。その上で、今回のグアムで行われた解剖については「美容外科医向けの臨床の解剖」と指摘。「例えばヒアルロン酸注入はすごく簡単だと思っている方が多いと思う。実際にはものすごくリスクの高いことだ。動脈の中に誤ってヒアルロン酸を注入してしまうと、末梢の支配領域の皮膚が壊死するとか、あとは失明するとか、脳梗塞になるとか、そういうことが起こりうる。なぜ、どういうルートを通って塞栓が起こるのかという血管の解剖。その血管の解剖だと、ホルマリンに漬けたご遺体だとパサパサになっているので分からない。それがfresh cadaverだと血管がまだ瑞々しくて、中が通る。水を注入するとこういう経路で、ここの支配領域に行くという勉強ができる。あとは美容領域だと、例えば鼻の骨切り手術とか、あとは顔面の骨切り手術とか、あとは上瞼の手術とか、下瞼の手術でもfresh cadaverだとメスで切り開いていって手術と同じような要領で解剖させていただいて、それが手術のトレーニングになる」と、美容外科医でも献体に触れる機会が、大きな経験につながるものだと述べた。さらには、日本の現役医師が、技術向上のために解剖する機会は決して多くないといい「まだそういうシステムが日本だと整っていない。アメリカの方が整っているのでツアーをする」と加えた。 今回、倫理観として大きな炎上のきっかけになったのが、モザイクがかかっているとはいえ、献体が映り込むようにスマホで撮影したこと、そのものだ。ただ後藤氏は、見方に対して慎重な姿勢を取る。「学生の病理解剖だったりとか、僕らが一般臨床医の後の病理解剖とかだったら、それはナンセンスなのでもちろん通常は入れない。今回の海外のところのレギュレーションだったりとか、例えば開示のルールだったりとか、その辺が不透明な状態で、僕らが語りすぎるのはよくないなと思う」と、現地でのルールに沿ったものである可能性を否定しなかった。 また「正直なところ、我々の国の感性だったりとか、例えば解剖の時に『この心臓がきれい』と言ったら、一般の市民の人が受け入れてくれるかという話だ。我々医療者の中の常識が、当然みなさんの中では違ってくるという、そういう感性を持ってSNSに出さないとこういうことになるというのもある。今回のことはどっちにしても駄目だ。駄目だが、ただ感性の違いとかでさらに炎上していた感覚を、僕は持っている」と、医療界と一般社会の認識、感覚のギャップも炎上を大きくした可能性を指摘した。 日本の場合は献体の前に、スマホを持ち込んだりするのは当たり前ではないというのが、スタジオの意見として一致を見たが、後藤氏は「基本的には個人情報を守るというルールがある。だからみんながこれを見た時に、うわっと思った。明らかにアレルギー反応があったし、僕も同様だった。この背景というのを一回考えないといけないというのと、例えば他国のルールだったりとかそういうものが、例えば決められていたりだとか、SNSがOKとかもある。例えば手術動画とかでも、患者さんの許可が得られていれば、出たりとかもある。そこがちょっと難しいところだ。なので、我々は必ずレギュレーションとかを確認した上じゃないと、多く語りすぎてもよくない」と繰り返していた。 今回の一件で、献体に前向きだった人が取りやめるという声も出ていることにより、高須氏は医学の進歩が遅れることを危惧している。高須氏は「もちろんそれはある。僕の時は学生の時は3人で1体だった。それを2回させていただいた。それが4人で1体とか5人で1体とかだと、自分が展開して広げてという操作がなかなかできなくなってしまう。神経の走行とかも筋肉の中を切り開いてという操作をすることが勉強になるので、きっかけが失われてしまうのだと思う」。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部