老舗下着メーカーがアパレルに参入、女性の体を60年研究した独自の知見で「服と下着の境界を超える服」への挑戦
大手下着メーカー・ワコールが昨年夏に立ち上げた『OUR WACOAL』。「服と下着の境界を超える服」というコンセプトのもと、洋服にカップのついた「カップインウェア」を中心にトップス、ボトムス、ワンピースなど幅広い商品を展開している。同ブランドの「ワイドパンツ」がXで話題となり、カラーによっては一時完売するなど、立ち上げ一年にして注目を集めている。その好調の背景にはワコールが捉える女性の意識の変化と「ワコール人間科学研究開発センター」で収集したデータの活用があった。下着における意識の変化を同社はどのようにとらえ、商品開発を行っているのか話を聞いた。 【写真】キャミソールは、ここまでヘルシーに着こなせる…ワコールと「ADAM ET ROPE'」がコラボしたカップインウェア
■下着の紐や透けが気になる“煩わしさ”を解消したい
かつて“部屋着”の象徴だったスウェットがおしゃれ着として定着したり、家から1マイル(約1.6km)の範囲で着る“ワンマイルウェア”が登場したり、部屋着と外着の垣根は近年無くなりつつある。下着も同様で、アパレルメーカーがカップ一体型の肌着をアウターとして企画するなど洋服のあり方はさらに多様化している。 ワコールでも度々トレンドを捉えた商品を企画するための話し合いが行われていたが、そこで議論となったのは「洋服の多様化が進んでいるのに、それに合った下着が少ない」というユーザーの意見だった。「下着と洋服のジャンルを分けて考えるのではなく、それらを気にせずファッションを楽しむ。幅を広げることはできないか」と、下着メーカー発のファッションブランドを立ち上げた。 「洋服を楽しもうとすればするほど、悩みは尽きないものです。例えばブラジャーの紐や下着が透けるのが気になることってありますよね。そういう“ちょっとした煩わしさ”が多々あるんです。そんな悩みを集めていって、『こういう服のときは、こういうものがあったらいいよね、ここにカップがついちゃえばいいよね』というところをデザイナーさんと議論し、デザインに落とし込んでいきました」(「OUR WACOAL」商品MD・村井美沙さん)