A/BときたらC/Dじゃ…? ゲームコントローラーボタンが“X/Y”になった納得の理由
増加し続けるボタンやレバー
家庭用ゲームを遊ぶのに欠かせないのが、ゲームのコントローラーです。ゲームの内容やゲーム機同様にコントローラーも進化を続けていますが、なかでも劇的な変化を遂げたのが、「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)から「スーパーファミコン」(以下、スーファミ)への移行期です。 【画像】ボタンはさらに増えて6つに! これが「ボタン増加」のきっかけとなったゲームです 「A/B」ボタンから「A/B」「X/Y」「L/R」の6つへと一気に増えましたが、なぜ「AB、CD」ではなく「AB、XY」だったのでしょうか? 家庭用ゲームの黎明期、コントローラーの仕様は当然定まっていませんでした。そもそもコントローラーがなく、本体に付いているボタンで操作する機種まであったのです。 現在使用されているコントローラーの源流とも言えるのが、1983年に発売されたファミコンで採用されたタイプです。十字キーとA/Bボタンのシンプルな組み合わせは、無数のゲームに対応できる画期的なものでした。しかも最初からふたつのコントローラーが接続されていたことは、家族や友達と一緒に遊べるゲーム機としてファミコンが大ブームを起こした大きな理由だったと言えるでしょう。 しかしゲームの飛躍的進化により、より多くのボタンが必要になったのも事実です。1990年に発売されたスーファミではA/Bボタンに沿うようにX/Yボタンが、さらにコントローラーの左右上部にはL/Rボタンが追加され、一気に6個へと増加しました。 現在、任天堂株式会社の代表取締役フェローを務める宮本茂氏は、ボタンを6つに増やした理由を当時流行していたアーケード版『ストリートファイターII』(以下、ストII)の影響が大きかったと、ある講演で語っています。 ●なぜ「C/D」ではなく「X/Y」だったのか 対戦格闘ゲームでL/Rボタンを使うのは慣れが必要でしたが、なければそもそも6ボタンのゲームに対応することすらできません。またスーファミが6ボタンになったことにより、『F-ZERO』などのタイトルではL/Rボタンを使用して十字キー以上に自機を動かすことができるなど、より爽快で派手なゲーム性を生み出すことも可能となりました。ボタンの数はゲームの発展に不可欠な要素だと言えるでしょう。 それにしても、なぜ追加されたボタンがX/YとL/Rだったのでしょうか? L/Rについては「LEFT」「RIGHT」だと理解できます。しかし、X/Yについては少々唐突な印象もぬぐえません。 この点について宮本氏は、ゲームの基本はあくまでも十字キーとA/Bボタンだと語っており、ボタンを追加する際にC/DではなくX/Yとしたのは「視覚的な差別化を図るためだった」と理由を明かしています。 確かに、ボタンの役割を文章で説明する時には「ABCD」だと1グループと認識して混乱する可能性があります。「A/B」と「X/Y」ならば、はっきりと別グループとして認識しやすいのは確かで、この配慮は遊びを徹底的に追及する任天堂イズムが感じられるエピソードです。さらなるボタン追加のために「Z」を開けておいたのも、英断と言えるでしょう。 現在ではコントローラーは更に進化し、より多くのボタンやスティックが当たり前のように装備されています。『リングフィット アドベンチャー』の「リングコン」など特定のゲーム専用のコントローラーも登場しており、ゲームの盛り上げに貢献しています。これからも、コントローラーはさらなる進化を遂げていくのでしょう。
早川清一朗