ムクドリ大群で大騒音被害 「爆竹ドカン」追い出し作戦
夕暮れの繁華街に鳴り響く爆竹音
この日は日が暮れ始める午後5時過ぎから権堂町の区役員ら10数人が出動。爆竹を入れるバケツを用意し、ムクドリの襲来を待ちました。午後5時半ごろから上空に“大編隊”のムクドリが現れ、神社境内の大きな木にもぐり込みます。大半のムクドリがねぐらに落ち着いたころを見計らって、朝日貞義区長の掛け声で数カ所の木の根元に置いたバケツの中の爆竹に点火。数十発の爆竹があちこちでパパパパーンと鳴り響き、驚いたムクドリはザーッという音を立てて逃げていきました。 空は暗くなっているためムクドリは上空を右往左往。一部は近くの鍋屋田小学校に向かったことから、急きょ同小学校の樹木の周辺でも爆竹を鳴らし、追いたてました。朝日区長は「7月の作戦は効果があったんですがね。今回はどうなるか」と、空を見上げていました。念のため14日も爆竹作戦を用意して役員らが集まり、専門家の指導で用意したフクロウの鳴き声を拡声器で流しながら待機。一部の木にムクドリが集まりましたが、フクロウの声に驚いたのか飛び去り、爆竹は鳴らさずに終わりました。
なぜムクドリは市街地に?
権堂町を含む長野市の第三地区住民自治協議会の浅倉信事務局長もこの日の作戦に立ち会いました。同事務局長によると、専門家らの説明でムクドリは中山間地のすみかの宅地化などで一時、山ぎわに追い上げられたが、ムクドリの寝込みを襲う夜行性のフクロウなどの天敵に追われて、温かく明るい市街地にねぐらを求めてきたらしいと言います。 善光寺がある長野市周辺の「善光寺平」のムクドリは数万羽と見られ、その大集団で移動することもあるとされています。浅倉事務局長は「普通は1000~2000羽のグループがあちこちにいるようですが、ときには大集団を組むようです。また、市街地にねぐらを求めるようになるまで10年近くかかって学習してきたらしいとのことです」と話していました。 市街地の被害にとどまらず、ムクドリの農作物被害は、2006年度の農水省のまとめで長野県は4900万円に上り、近県の山梨(被害額約1000万円)、神奈川(同約700万円)などに比べて際立っています。ただ、鳥獣保護法は基本的に鳥獣の捕獲などを禁止しており、マガモ、キジバトなど指定された29種類の「狩猟鳥」にムクドリも含まれています。狩猟期間中に限り、銃やわななど定められた免許の方法で鳥獣保護区や休猟区外で捕獲できます。 こうしたムクドリを元のねぐらに戻すにはどうすればいいのか。中山間地の農林業の衰退や、住宅地域の拡大などがムクドリにとどまらず動物たちの生態や行動の変化をもたらしているという指摘もあるだけに、ムクドリ騒動は地域社会の都市、農村部で指摘されてきた課題をあらためて示しているとも言えそうです。 (高越良一/ライター)