「iPodの父」トニー・ファデルが参画する暗号資産ウォレット、Ledgerが描く未来
暗号資産のハードウェアウォレットを開発するLedger(レジャー)は、この分野のセキュリティの知見を活用して、より広範な市場での成長を見据えている。同社は、自社のデバイスを、「デジタル時代のパスポート」のような不可欠な存在にしようとしている。 暗号資産市場が再び活況を呈している。ビットコイン価格は、10万ドル近くにまで上昇し、ミームコインも驚異的なスピードで市場を拡大するなど、新たなトレーダーがこの分野を席巻している。しかし、暗号資産への関心の高まりは、古くからの問題を再燃させてもいる。 すなわち、ハッキングの脅威だ。2024年上半期だけで、サイバー犯罪者は前年同時期の6億5700万ドル(約987億円)を大きく上回る13億ドル(約1950億円)を投資家から奪っていた。 ここで威力を発揮するのが、2014年に設立され、パリを拠点とするLedgerのプロダクトだ。同社の主力製品であるハードウェアウォレットは、デジタル資産のための高性能な金庫として機能するもので、暗号資産へアクセスするために必要な複雑なパスワードである、プライベートキーを守る役割を果たす。 Ledgerのデバイスは、初期設定のプロセスで24語のリカバリーフレーズを生成し、これがマスターキーとして機能する。取引を行う際にはデバイスをコンピュータに接続し、専用のアプリで管理する必要がある。また、物理的なボタンを押して取引を確認する仕組みとなっており、ハッカーがコンピュータを侵害しても、物理デバイスと24語のリカバリーフレーズがなければデジタル資産にアクセスすることは不可能だ。 LedgerのCEOを務めるパスカル・ゴーティエ(48)は、「セキュリティ企業にとっては実績がすべてだ」と語る。創業から10年を数える同社のウォレットは、これまで一度もハッキングされたことがないという。 ビットコインの急騰によって、Ledgerのビジネスも加速している。しかし、ゴーティエはさらに大きな目標を見据えている。「暗号資産は、この会社の事業の中心にあるが、我々はもっと広い視野を持っている。これからは、サイバーセキュリティ企業としての立ち位置を明確にしていく」と彼は説明した。