「三途の川がはっきりと見えた」がんで余命宣告の「森永卓郎さん」…医療費「毎月120万円」の先に見据える「病は気から」の境地
がん細胞と免疫細胞の戦い
ただ、医師からは、「オプジーボの効果は数か月で落ちてくることが多いので、そのくらいのスパンで決着はつくでしょう」と言われていた。最先端の薬でも効果には限界があるということだろう。だが、現実には、私のガン細胞と免疫細胞の戦いは、いまだに膠着状態が続いている。肝動脈の周りのモヤモヤは、この一年間、大きくもなっていないし、小さくもなっていないのだ。 つまり、私のがんは、少なくとも完治に向かっているわけではない。もちろん、悪化もしていないから、ある程度、治療の効果が表れているのかもしれない。その効果をオプジーボがもたらしているのか、NK療法がもたらしているのかは、分からない。両方が効いているのかもしれないし、両方とも効いていないのかもしれない。世間には大きな誤解があって、「オプジーボはがん治療の万能薬で、あらゆるがんを治せる」と思っている人が結構いる。しかし、私自身が完治に向かっていないのだから、すべての人に効果があるとは決して言えない。それは、NK療法も同じだ。 ただ、私のところには、ちょくちょく「どんな治療をどこの病院でしているのですか」という問い合わせがくる。その時、私はこう答えている。「お答えはしますが、私と同じことをやって効果があるかどうかは、まったく分かりません。私自身が完治に向かっていないので、お金をドブに捨てることにもつながりかねないので、そのことは理解してください」。
そして、治療法の問い合わせよりも、圧倒的に多く寄せられているのが、「こうすればがんが治せます」というアドバイスのメールだ。いままで2000件を超えるメールを受け取ったが、その内容はさまざまで、宗教への入信に始まり、がんを治せる名医やクリニックの紹介、治療器具の紹介、ワクチン、治療薬、治療法、健康食品、食生活、ライフスタイルなど、アドバイスは、あらゆる分野に及んでいる。そうしたアドバイスの一部は、私を広告塔として利用したり、高額の治療費を請求したりしようとしているのだが、大部分は、あくまでも善意に基づいて、自分自身や関係者の体験を連絡してくれるのだ。そこで語られる様々な対策は、実際に効果をもたらしているのだろう。 事実として、がんが進行するかどうかは、がん細胞と免疫細胞の戦い次第だ。そして、免疫は、前向きの気持ちによって高まる。医師と話しをしていても、免疫の3割から5割は前向きの気持ちが作り出していると主張する人が多い。まさに「病は気から」であり、本人が効果ありと信じれば、例え水道水であっても、免疫を高める効果をもたらすのだ。 少なくとも、いま私のガンが悪化していないのは、この精神的な部分が大きいのではないかと私は考えるようになった。そのことは、私自身の体を張った「実験」でもある程度確かめられたと考えている。 第2回【「命が尽きるまでフルスイングで生きる」 森永卓郎さんが明かした“目標”は「打倒イソップ」と「CDデビュー」】では、前向きに生きる決意を固めた森永氏が、今後、実現したいテーマについて語っている。 デイリー新潮編集部
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