NHK大河「光る君へ」隆家覚醒!刀伊に立ち向かう勇敢さにほれぼれ 倒れた周明の容体は… 第47回みどころ
女優の吉高由里子が主演するNHK大河ドラマ「光る君へ」の第47回「哀しくとも」が8日に放送される。 【写真】ワイルドになった隆家(竜星涼) 大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、1000年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部/まひろの生涯に迫る。 1日に放送された第46回「刀伊の入寇」でまひろ(吉高)は、旅に出た太宰府の地で、かつて越前で出会った周明(松下洸平)と再会。大宰権帥の隆家(竜星涼)らと交流するが、能古島に異国の賊が突如襲来する。壱岐や対馬の民が犠牲になり、連れ去られたことを知った隆家は、地元の豪族と協力し応戦。松浦に船で渡ろうとしていたまひろも戦いに巻き込まれる―という展開となった。なお原稿のルール上、地名を「太宰府」、平安の役所を「大宰府」と表記することにする。 6月の第24回以来、約5か月ぶりに再登場した周明。「光る君へ」の時間軸でも約20年の月日がたっており、かつてロマンス詐欺を仕掛けた周明がまひろに抱いていた負い目やわだかまりも消えていく。周明は大宰府の政庁で通訳をしながら宋の眼病の名医のもとで薬師の仕事にも復帰。実資(秋山竜次)が隆家に紹介した宋の薬師がここに利いてくる。 第46回は、ここまで45回欠かさず見てきたからこそ抱くことのできる感情に大いに揺さぶられ、情緒が忙しい回だった。周明の描写もそうだし、市で紅を買う乙丸(矢部太郎)も。まひろが周明の前で涙ながらに道長との決別の真意を明かし「私はもう終わってしまったの。終わってしまったのに、それが認められないの」と本音を吐露するシーンも胸が苦しくなった。「生きること」と「書くこと」をイコールとしてここまで歩んできただけに、ゼロに戻ってしまったまひろの絶望を思うと切ない。 そして何より、大河ドラマでおそらく初めて実写で描かれた刀伊の入寇の脅威、そして仲間とともに生身で立ち向かう隆家のりりしさである。賄(まいない)も受け取らず、「富なぞ要らぬ。仲間がいれば」と部下と同じ目線で進んでいく、理想の上司ナンバーワン。大蔵種材(朝倉伸二)や平為賢(神尾佑)の戦況の読みもさえている。 これまで大河ドラマの合戦シーンは、武将の采配のもとに、武士同士がフル装備の武具でやり合う描写をよく見てきたが、そのエピソードゼロとも呼ぶべき刀伊の入寇は、あまりにも生身すぎる戦いであった。海から船で襲来する刀伊が、民の背中越しに見えるカットは、暮らしと侵略が地続きに描かれていて本当に背筋が凍った。双寿丸(伊藤健太郎)ら武人たちの戦い方や装備の簡素さも逆に恐ろしさを増す。 隆家が弓から矢を放つ描写も象徴的だった。若き日に「長徳の変」で花山院に矢を放ち、一家の没落の原因を作った矢が、いま民を救う矢となっている。「よく来てくれた」「無駄死にするな」と部下を鼓舞し自らも最前線に立つ人間的な厚み、「対馬より先に進んではならぬ。そこまで行けばこちらから異国に戦を仕掛けることになる」というバランス感覚。道長ができなかった「民のための政」を現場で体現している。「ここまで見てきてよかった…!」と本当に思わされる回だった。 そして松浦に船で向かおうとするまひろも、周明や乙丸とともに、刀伊の襲撃に遭遇。応戦する武者の間をすり抜けて逃げ惑う最中、周明は正面から胸に矢を受けまひろの目の前で倒れる―というショックすぎる幕切れとなった。 第47回は、衝撃の展開の続きから描かれる。一方で、朝廷にも刀伊の攻撃による被害状況が伝わり、動揺が広がる中、摂政・頼通(渡邊圭祐)は対応に動かず。太閤・道長への報告も止めてしまう。事態を歯がゆく思う実資の元に前線で戦ってきた隆家から文が届く。やがて異国の脅威を知った道長は、まひろの安否が気になり…という展開が繰り広げられていく。 残すところあと2回。「2回で本当に終われる?」と心配になるぐらい、この回も駆け足することなく丁寧に作られている。登場人物の本音が吐露されるシーンも多いので、見応えはたっぷりある。早いもので、毎週続けてきた当コラムも来週で最終回。紫式部には遠く及ばないが、休日でも旅先でも書き続けてきたこの1年は苦しかったが幸せな時間でもあったし、「光る君へ」を通してみなさまの心に触れることができて貴重な経験だった。私は「終わってしまう」ことを認められるだろうか。また来週、ここでお会いしましょう。(NHK担当・宮路美穂)
報知新聞社