全国の三セク鉄道 売上高トップは「つくばエクスプレス」 三セク鉄道の約9割が輸送人員増も、6割が経常赤字
売上高、経常利益ともに都市型三セク鉄道が上位を独占
売上高トップは、「つくばエクスプレス」を運営する首都圏新都市鉄道の452億3,500万円(前年度比10.7%増)。秋葉原~つくば間58.3kmを結ぶ同路線は、2005年の開業以来、沿線開発が進んで輸送人員を伸ばした。コロナ禍が深刻だった2021年3月期の売上高は348億1,800万円まで落ち込み、大幅赤字を計上した。だが、その後は回復し、コロナ禍前の468億500万円(2020年3月期)には及ばないものの、業績回復が鮮明となっている。 2位は、東京臨海高速鉄道(りんかい線)の179億2,700万円。以下、東葉高速鉄道、北総鉄道、横浜高速鉄道と続き、トップ10社すべてを都市型三セク鉄道が占めた。大都市圏はもともと利用者が多いうえに、沿線の宅地開発などで人口増が続く路線が上位を占めている。 また、前年度との比較で売上高上位10社中、最も高い伸びを見せたのはゆりかもめ(東京都江東区)で、約3割(28.1%増)の増収となった。同社も2021年3月期は半減以下の売上高44億7,700万円にまで落ち込んだ。その後は急回復し、2020年3月期(売上高107億1,600万円)以来、4年ぶりに売上高100億円台を達成した。お台場、豊洲市場などの人気観光スポットを抱え、インバウンド需要も取り込んでさらなる業績拡大も見込まれる。 経常利益でも売上高ランキングと同じ傾向で、トップ10を都市型三セク鉄道が占めた。利用客の増加が投資効率に影響し、収益力の違いを見せつけた格好となった。 ◇ ◇ ◇ コロナ禍は、移動制限や観光需要の消失を引き起こし、三セク鉄道の業績に多大な悪影響を及ぼした。旧国鉄転換型や都市型を問わず、売上はコロナ禍前から半減し、大幅赤字を計上した三セク鉄道は多い。だが、コロナ禍も落ち着き、都心部に拠点を置く都市型三セク鉄道はインバウンド需要も取り込み、業績回復が顕著になっている。 その一方で、旧国鉄転換型や私鉄・新幹線転換型の三セク鉄道は、改善の兆しはあるものの、慢性的な赤字体質からは脱却できていない。これらの三セク鉄道は社会インフラ維持を目的に、赤字路線を継承した歴史的経緯もあり、採算だけを基準に同列に評価はできない。ただ、財務がぜい弱な自治体は三セク鉄道への補助金が財政圧迫を招く可能性もあり、過疎化と少子高齢化に地域振興、財政負担のジレンマが複雑に絡んで難しい舵取りを求められている。 国土交通省によると、2000年度以降で廃止された鉄軌道路線は三セク、民間含め全国で47路線、営業キロ数は1,275.3kmに及ぶ。近年は、JR北海道管内の不採算路線で廃線が相次いだ。 三セク鉄道の廃線は、2008年12月の高千穂鉄道(宮崎県)以来、発生していない。だが、経営改善プロジェクトや存続の可否を含めた検討会は各地で起きている。補助金依存から抜け出し、自立経営を含めた最適な資源配分が俎上に乗ることも予想される。こうした議論を交えながら、三セク鉄道経営はこれまで以上に真価を問われることになりそうだ。