7カ月以上放置! 日本政府はなぜ中国の「不法ブイ」を撤去しないのか 「潜水艦運用に利用される」
南シナ海のほぼ全域が中国の“管轄海域”
中国は昨年8月に「2023年版標準地図」を公表した。そこでは東シナ海と南シナ海のほぼ全域が中国の“管轄海域”とされている。そもそも国際法には管轄海域という概念自体がないが、中国は独自の海洋戦略に基づいて管轄海域なるものを設定しているのだ。 中国がこうした海洋における国家目標を達成するには、三つの解決すべき問題がある。(1)香港、(2)台湾、そして(3)尖閣諸島だ。これらはすべて第1列島線の中国側に位置している。 ここで改めて香港について説明しておくと、1984年にトウ小平と英国のサッチャー首相の間で基本合意が交わされ、香港は1997年に英国から中国に返還された。条件は「中国の社会主義を実施せず、資本主義制度は50年間維持される」という一国二制度の堅持であった。 これは資本主義を謳歌する、“明るい香港”を半世紀にわたって保障するというものだった。この点について、私はトウが最初からサッチャーをだまそうと考えていたとは思わない。むしろトウは英国と本気で「一国二制度50年」を約束したはずだ。なぜなら当時の中国には隣国のソ連が潜在的な脅威であり、米国と友好関係にある英国を敵とは見なしていなかったからだ。従って、第1列島線のような構想はトウの頭にはなかったのである。
中国に残された課題は台湾と尖閣諸島
一方で、トウは香港の「一国二制度」を成功させれば、同じ民主主義体制を取る台湾は将来的に中国になびくと計算していただろう。実際、習近平も国家主席に就任した翌年の2014年には、台湾における「一国二制度」の可能性を示唆していた。ところがその後、中長期的に米国と対決せざるを得なくなったことで、雨傘運動をはじめ、北京の意向を無視したり、蔑(ないがし)ろにしたりする香港を許容しなくなった。周知の通り、習は国家安全維持法などを駆使して香港を完全に抑え込み、現在に至る。 つまり、中国に残された課題は台湾と尖閣諸島である。中国にとって台湾と尖閣諸島は香港と同列の存在で、将来的に米国と対決していくことを考えれば、早期に解決しておくべき重要課題とみなければならない。