「強っ!レベル高っ!」ボクシング“最強世代”田中恒成が驚いた井上拓真との初対戦「アイツになら負けてもいい。そんな気持ちになったのは拓真だけ」
3人の世界王者が揃う1995年度生まれ。その黄金世代を牽引してきた井上拓真と田中恒成、2人のライバルは、同学年の選手たちにとっても圧倒的な存在だった。彼ら'95年組の精鋭たちがしのぎを削り合った3年間の物語。 【初出:発売中のNumber1097号[追憶ノンフィクション]井上拓真/田中恒成/ユーリ阿久井政悟「最強世代が覇を争った高校3年間」より】 【衝撃写真】「ネリの顔が大変なことに…」井上尚弥のエグい右でネリの顔面がゆがみ「グシャリと崩れ落ちた」衝撃KOの連続写真も一気に見る(全50枚)
井上拓真の予感「ずっと当たるかもしれないな」
これは偶然か、それとも運命なのか。 1年生の井上拓真(神奈川・綾瀬西)の耳に、ある声が聞こえてきた。 「弟が出るらしいぞ」 2011年8月12日、インターハイが開催中の秋田市立体育館。ピン級(46kg以下)の2回戦を勝利で終えると、入れ替わるように田中恒成(岐阜・中京)がリングに上がった。 拓真と恒成には2学年上の兄がいる。井上尚弥と田中亮明。同階級の二人は全国大会の上位でぶつかるライバル。その弟同士もまた同じ階級のようだ。 リング上の勝者と準々決勝で対戦することになっている。じっくり「弟」の動きを観察した。スピードがあり、他の選手と比べ、頭一つ抜けて見える。 「ここからずっと当たるかもしれないな」 拓真はそんな予感を覚えた。
「強っ! レベル高っ!」あまりの力強さに驚いた
翌13日。拓真はリング上でイメージ通り闘うことができた。 対する恒成は対峙した瞬間、相手のあまりの力強さに驚いた。 「強っ! レベル高っ!」 心の声が漏れ、表情と動きに出てしまう。前に出るのが持ち味の恒成が自ら下がった。顔が歪む。相手のレベルが一段上で「敵わないな」と気持ちでも負けていた。 恒成の父・斉(ひとし)は試合途中にもかかわらず、席を立った。「アイツ、びびっとる」。もうこれ以上、見ていられなかった。後にも先にも途中退席した唯一の試合だ。 拓真の手が挙がった。続く準決勝で坪井智也(静岡・浜松工)、決勝で中嶋憂輝(奈良・王寺工)と同学年を破って優勝。ピン級は1995年世代が席巻し、その頂点に立った。ライトフライ級(49kg以下)決勝では尚弥が亮明を退け、井上兄弟がダブル優勝を飾った。 「正直、やっぱりナオ(尚弥)が1年からタイトルを獲っていて、その流れもある。俺もいけるだろう、という感じでしたね」 拓真の心は安堵感に包まれた。 2カ月後の山口国体で早くも再戦のときがやってくる。恒成はライトフライ級の初戦で3年生の京口紘人(大阪・伯太)を破るなど4試合を勝ち上がり決勝へ。反対側のコーナーには当然、拓真がいる。 もう思い切りいくしかない。前回の反省を生かし、気持ちを前面に出してがむしゃらに攻め抜いた。恒成が8-5で勝ち、優勝。尚弥が海外遠征で不在の中、今度は田中兄弟がダブル制覇を成し遂げた。 物語の主役は尚弥と亮明から「スーパー1年生」の拓真と恒成へと引き継がれた。二人の試合になると、自然とリング周辺に人だかりができる。ハイレベルで白熱の好勝負。拓真は華麗なステップワークに乗せて、多彩なパンチを打ち込んだ。恒成は攻防のテンポが速く、果敢に前へ出る。多くの試合において、1ラウンドは拓真が先行し、2ラウンドは恒成が巻き返す。最終3ラウンドを獲った方が勝利というスリリングな展開で、両者の闘いはかみ合った。
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