「強っ!レベル高っ!」ボクシング“最強世代”田中恒成が驚いた井上拓真との初対戦「アイツになら負けてもいい。そんな気持ちになったのは拓真だけ」
負けてもいいから、思い切り戦いたい
恒成は元世界王者で、のちに所属ジム会長となる畑中清詞からこう言われた。 「拓真との試合はプロの世界戦の練習みたいなもんだからな」 独特の緊張感と実力者同士による紙一重の闘い。いずれ経験するかもしれないプロ最高峰の舞台を連想させた。 負けん気が強く、尖った高校時代だったにもかかわらず、恒成には不思議な感情が込み上げてきた。 「拓真のことをすごく認めていたというか、その気持ちが強かった。だから、どうせなら決勝でやりたい。負けてもいい、と言ったらおかしいけど、とにかく拓真とは思い切り闘いたい、というのがありました」 アイツになら負けてもいい。そんな気持ちになったのは拓真に対してだけ。これからも他の人にそう思うことはないだろう。
見た目とのギャップに驚いた 「体操服イン」の選手
高校1年の終わり頃だった。 各地から選手が集まり、岐阜でスパーリング合宿が行われた。恒成はそこである選手と遭遇する。 「体操服イン、みたいな子がいたんです」 体操着のようなTシャツを律儀にズボンの中に入れている。闘争心が必要なボクシング。着こなしが独特で朴訥とした姿は「ちょっと、大丈夫?」と心配になるほどだった。だが、いざ手合わせをするとパンチが強い。見た目とのギャップに驚いた。「体操服イン」の選手は、阿久井政悟(岡山・倉敷翠松)と名乗った。
(「NumberPREMIER Ex」森合正範 = 文)
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