木を削って作る精巧なプロペラ戦闘機 「ソリッドモデル」ファンら今も集う
とある日曜日の午後、東京のJR新橋駅にほど近いビルの一室。荷物を抱えた中高年の男性10数人が集まってきました。彼らはプロペラの戦闘機の模型などを手にしています。それは木から削り出した独特の作品で、誰もが貴重品のように慎重に取り扱っています。 実はこうして木を材料に作られた観賞用の模型のことを「ソリッドモデル」といいます。日本でも戦前から趣味としてあったソリッドモデルですが、今ではすっかり“絶滅危惧種”のようにみられていました。しかし、全国のファンが地道な活動を続けていたのです。最近はアニメなどの影響で若者の参加の動きもあるといいます。その魅力は何か。10月30日に行われた「東京ソリッドモデルクラブ」(TSMC・白根晋次会長、会員50人)の月例会をのぞいてみました。
プラモデル登場前の中高年世代が多い
「ソリッド」とは中空のない木などの塊を指し、ソリッドモデルは長さ10数センチから数十センチの木の角材から飛行機の機体などを削り出します。精密な成型や塗装、装備品の制作など細かい作業が多く「1、2年から場合によっては4年がかりで制作することもある」と同クラブ。 クラブの歴史は、途中のクラブ名の名称変更や他クラブとの合併などがあったものの1953(昭和28)年の創立以来、63年に及びます。プラモデルが登場する前の模型世代の現在も現役の姿。このため会員の多くは60代から70代です。
この日は会員が都内や関東近県から作品を持参して駆け付け、互いに感想を述べ合ったり、技術情報を交換。並んだ作品はかつての戦闘機や旅客機、ヘリコプターなど多彩です。 米軍の偵察機、マクダネルRF―101Cを持参した武田明夫さん(69)は2年がかりで制作を続け、来年静岡県で開く展示会への出品を目指しています。他の会員が持参した米軍の練習機AT6-テキサンは木製の機体に薄いアルミ板を張り付け、外装は実際の機体と見違えるほど。精密に翼の鋲(びょう)まで再現しています。