木を削って作る精巧なプロペラ戦闘機 「ソリッドモデル」ファンら今も集う
決まり事なく自由に作れる
ソリッドモデルの魅力について白根会長は「決まり事とかあつらえの部品がなく、自分の思う通りに作れる自由度がいい」。制作者それぞれの世界があるため飛行機のプロペラをモーターで回す仕組みについても「ソリッドモデルに動力を使うのは邪道だね」「いや、そんなことはない」と会場で議論を楽しんでいます。
「かつてはソリッドモデルの縮尺は50分の1だとされていたが、最近は縮尺もメートルからインチになって自由になってきた」(白根会長)と、基本部分の微妙な変化もあるようです。
多くの会員は中・高校生のころから続く趣味。「高校生のときにこのクラブに入った」という粟津健二さん(79)は当時、機体の材料にするため薪(まき)を割ったり「塗料の代わりに油絵具を塗ったりしていた」。ドイツのハインケル社の飛行機などを毎月4~5機のペースで制作。また、白根会長も中学2年から始め、「作ったゼロ戦に絵の具を塗っていた」。
中高年の趣味とも見られますが、「最近は若い人がポツポツ興味を持ち始めているようです」と武田さん。この日も31歳の水谷欣正(よしのぶ)さんが参加し、自ら開発した飛行機の風防の成型器を披露。温めた薄い塩ビ板を木型の上にかぶせ掃除機で周りの空気を抜くことで成型できる装置に関心が集まっていました。 水谷さんがソリッドモデルに関心を持った動機は「アニメに出てくる戦闘機や飛行機を作ってみたいと、こうしたクラブを探していた」。2年前にこのクラブを見つけました。
ソリッドモデルのクラブは東京のほか名古屋、大阪、九州、千葉県などにあり、全国のファンは200人前後と見られています。機体やひとつひとつの部品を最初から作る手作り感が、何でも手軽に入手できる現代に新鮮な魅力を発信していくことになるかもしれません。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説