回復の兆しが見えない、住宅需要が停滞している要因
住宅の着工は停滞が続いている。国土交通省の住宅着工統計によると、貸家と分譲住宅の10月の新設着工戸数は前年同月比で減少。全体では同2・9%減の6万9669戸で6カ月連続の減少となった。一方、個人が居住する目的で建築する「持ち家」の着工戸数は同9・0%増の1万9705戸。民間資金・公的資金による持ち家が増え、35カ月ぶりに前年同月比で増加に転じたが依然として低水準だ。 【写真】破格3億3930万円…事例少ない“建て売り御殿” 住宅取得の需要は2022年ごろから停滞し、回復の兆しは見えない。住宅生産団体連合会(住団連)会員企業の経営者からは「様子見の顧客が増えている」「富裕層向けは堅調だが(初めて住宅を購入する)一次取得者の動きが慎重」との声が上がる。 住宅需要は「価格と金利の上昇の懸念から今後も停滞する可能性が高い」(野村証券の福島大輔リサーチアナリスト)。資材や人件費の高騰に対応しハウスメーカーは住宅の売価転嫁を進めており、1棟当たりの平均単価は上昇が続いている。 需要が停滞する中、ハウスメーカーは着工戸数の維持に向け、単価と利益率の引き上げを図る。「展示場の来場以外による成約を強化するとともに、高付加価値の提案に取り組む」(住団連の会員企業経営者)ほか、「エリア別商品戦略と販促強化で契約効率向上を目指す」(同)考えだ。 国が掲げる50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に対応し、ハウスメーカーは今後「環境対応型の住宅を供給する必要に迫られる」(野村証券の福島リサーチアナリスト)。ただ建築のサステナブル(持続可能)化はコスト上昇が伴う。顧客の理解を得るためには「提案を強化し、業界で足並みをそろえる必要がある」(住団連の会員企業経営者)。 中長期的に見て住宅需要は回復の見通しが立っていない。ハウスメーカーは本業である一戸建ての需要を取り戻すため、さらなるコスト削減と営業効率改善が求められる。