「業務上の権限を渡さない上司」が部下を苦しめている
プレーヤーからマネジャーになると役割も業務内容も大きく変わります。マネジャーの仕事とはいったいなんなのでしょうか? はじめてマネジャーになった人のよくある間違いとともに紹介していきます。 【図】上司からの「有害なフィードバック」の特徴 ※本稿は『マネジャーの全仕事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
マネジャーの仕事とは結局、何なのだろうか?
いろいろな答え方ができるが、「俳優が役を捉えるように、マネジメントを捉えなさい」というアドバイスが最も有益だろう。マネジャーは幅広い役割を演じ分けねばならない。 コーチ、業務基準の設定者、業績評価者、教師、動機づけのプロ、ビジョナリーなリーダー、その他さまざまな役割から、状況と目的に応じて適切なものを選ぶのだ。 新人マネジャーへの助言として「ありのままの自分でいればいい」とはよく言われるが、これは間違いだ。役割を使い分けられない限り、優秀なマネジャーになるのは難しい。 新人マネジャーの多くは、「自分の役割は指揮をすることだ」と勘違いしがちだ。ああしろ、こうしろと部下に指示してやらせるのが自分の仕事だと思い込んでしまうのである。 確かにそれもマネジャー業務の一部ではあり、必要な場面もある。けれど、マネジャーとチーム、双方の長期的な成功を考えれば、部下が自発的に動けるようサポートするほうが重要なのだ。 すなわち、あなたへの信頼と仕事への責任感を部下に持たせた上で、必要な権限を与えて、部下が仕事をしやすい環境を作ること、それがあなたの仕事なのだ。
マネジャーの主な仕事
マネジャーの主な仕事は、業種や組織形態を問わず一定である。プロの経営者なら、この考えに同意してくれるはずだ。マネジャーの主要な業務は、採用、コミュニケーション、計画、組織の編成、育成、モニタリング、評価、解雇の8つである。 これらの業務に慣れてうまくやれるようになれば、マネジャーの仕事は楽になる。8つの業務の詳細は追って説明するが、ひとまずここで定義をしておこう。 1. 採用:該当の仕事ができる能力やポテンシャル、やる気と熱意のある人を獲得すること。 2. コミュニケーション:経営理念や目的、組織の目標を部下に伝え、部署や事業部、業界の動きについての情報共有を行うこと。 3. 計画:組織目標の達成に貢献すべく、自部署の目標達成に向けて施策を決定すること。 4. 組織の編成:それぞれの業務やプロジェクトを実行するためのリソースを確保し、どの部下に何をさせるか決めること。 5. 育成:部下一人ひとりの現状の能力を把握し、求められるレベルとの差を明確化して、それを埋めるべく学習の機会を提供すること。 6. モニタリング:業務の進捗を把握し、部下それぞれがプロジェクトやタスクをうまくやれているか確認、対処すること。 7. 評価:部下一人ひとりの業績を評価し、本人の役に立つフィードバックを行い、個人として、チームとして要求される水準との比較を行うこと。 8. 解雇:組織に貢献ができない人、あるいは個人として必要な要件を満たさない人を、部署から取り除くこと。