小5からゲーム依存になった息子 どうやって脱却したのか? 親が語る葛藤の日々
5日間の「オフラインキャンプ」への参加
――その状態から、どうやって脱出したのですか。 転機が訪れたのは、小学6年の夏です。新聞記事で瀬戸内海の離島で開かれている「オフラインキャンプ」の存在を知り、ワラにもすがる思いで申し込みました。「オフラインキャンプ」とは、スマホやゲームから離れて、リアルな自然の中で楽しいことを知り、自分を見つめ直す5日間の小中高生向けプログラムです。 息子はもともとアウトドア好きだったので、新しい友だちや大学生メンターともすぐに打ち解け、自炊や海水浴、カヌーなどを楽しみました。キャンプ中は夕食後の1時間だけ、「スマホ部屋」でスマホやゲームを利用できるのですが、自然の中でのリアルな遊びのほうが楽しすぎて、だんだんと行かなくなったようです。さらにキャンプをコーディネートする兵庫県立大学の竹内和雄先生や大学生が、一人ひとりと毎晩じっくり話をしてくださったおかげで、自分の生活を見つめ直して、「ゲームをするのは〇時間に減らす」という自分なりの目標を立てて帰ってきました。
依存症の専門医の勉強会に夫婦で参加
――キャンプ後、息子さんに変化は見られましたか。 キャンプを境に改善されたのは、息子の生活より、実は親の考え方のほうでした。きっかけになったのは、キャンプにいらしていた依存症専門医の勉強会に、夫婦で参加したことです。先生は、「ゲームに依存している子どもにとって、ゲームは命の次に大事なもの。取り上げることは命を脅かすようなもの」だと説き、「家庭を息子さんが安心できる居場所にしてあげてください」と話されました。私はそのとき、「これからどうするの」「勉強しなさい」と息子に言ってきたことが、かえってゲーム依存を増大させていたことに気づきました。 「ゲームは一日〇時間まで」といったルールも、親が決めるのではなく、本人が考えるということが重要だと教わりました。勉強のプレッシャーから逃げてゲームにはまり、そのゲームをやめられない自分に絶望していたであろう息子は、「自分で決めたルールを守る」ということが小さな成功体験になり、その体験を重ねることで、自己肯定感を取り戻せることを知りました。 ――勉強会でのアドバイスを受けて、息子さんへの対応をどのように変えたのですか。 「勉強は?」「学校は?」など、息子を追い込むような言葉を封印し、「ご飯、おいしいね」といった何気ない会話を大切にしました。また、基本的に息子を見守ることに徹し、ルールを守れなかったときも、共感したうえで「次はどうしようか」と寄り添うことを心がけました。すると、親子関係は少しずつ落ち着いていきました。息子は内部進学はせずに地元の中学校に進学しました。他愛のない会話が増えてから、ゲームのやりすぎで昼夜逆転していた生活も、中学3年になって自分の意思で高校進学を決めてからは、朝起きて登校するという普通の生活に戻っていきました。