「役者さんに対する僕からのラブレターだと思ってやっています」、映画『スオミの話をしよう』脚本・監督、三谷幸喜さんインタビュー。
俳優たちの個性や魅力を、映画でいかに引き出せるか。
ある日、突然失踪したスオミについて、彼女を愛した5人の男たちがそれぞれに語るミステリーコメディ映画『スオミの話をしよう』。 喜劇作家として、舞台やドラマ、映画で活躍を続ける三谷幸喜さんが、5年ぶりにメガホンをとった最新作だ。 「映画は9本目になりますが、いまだに自分がどんなものを作ればいいか悩みます。今回は自分の出発点である舞台と映画のいいとこ取りをして、いかに俳優さんたちを魅力的に描けるかという課題に行き着きました」 主演の長澤まさみさんと物語の軸となる5人の俳優陣は、三谷さんがイメージした、それぞれ個性的でユニークなキャラクターを演じている。 【写真ギャラリーを見る】
「映画作りは俳優さんありき。僕にとっては彼らが創作の原動力にもなっています。だから脚本は、どんなに出番の少ない役柄であっても、こんなに面白いセリフを書いてくれたんだと思ってもらえるものにしたい。役者さんに対する僕からのラブレターだと思ってやっています。 『スオミ~』は全体的に、セリフ量も長回しのシーンも多いんです。特に最後の歌と踊りのパートはリハーサルも含めてとても大変だったんですが、みなさんがんばってやり遂げてくださった。その汗と涙の結晶です」 歌や踊りにもチャレンジしながら、三谷さんらしい痛快なミステリーとして映画は完成した。 「僕が考える面白い物語って、ミステリーであってもなくても何かしらの謎があって、それが最後にきちんと納得のいくかたちで解決するもの。世の中には理屈で解決できないことが山ほどありますが、せめてフィクションの世界では、という思いがあるんです。今回は意識的に多くのクエスチョンをちりばめることによって、観る人の“どういうことなんだろう”という期待感が、物語を先に進めていくような作品になりました」 そんな三谷さんの映画作りの姿勢はどこまでも謙虚で、撮影が始まると誰よりも早く現場入りするという。 「僕は映画監督として、決して優れた才能があるわけではない。だから、余計にがんばらないとダメだと思っているんです。スタッフの方々から映画作りを教わっているんだという気持ちは、絶対に忘れちゃいけないと考えています」 ようやく新作が公開されるタイミングだが、その頭の中には早くも未来に向けての構想があるようだ。 「『スオミ~』のミュージカルシーンは大変だったけど面白かった。観ていてスカッとした多幸感も感じられる。でも、世界に誇れるような本格的なミュージカル映画って、僕はまだ日本にはないように思っていて。そういう作品が作れたら素敵ですね」