ついに全国33店舗目。EV大手BYD、関東初の新築ディーラーを横浜・港北ニュータウンにオープン
中国の大手電気自動車メーカー「BYD(比亜迪)」は2023年1月末に日本での乗用車販売を開始以来、着々とその販売台数とディーラーを増やし続けている。 もっと写真を見る 同社が現在、日本に設けている販売拠点は大きくわけて、正式な店舗として営業する「正規ディーラー」、そして将来的な店舗開設へ向けた仮拠点となる「開業準備室」の2種が存在する。 2024年10月末現在で正規ディーラーは全国33か所にオープンしており、2024年末までに開業準備室と合わせて全国90か所へと販売ネットワークを拡大させる方針だという。当初からの計画は2025年末までに全国100か所に販売拠点を設けるとしており、その実現へ確実に歩みを進めている。
10月11日には33店舗目となる「BYD AUTO 港北ニュータウン」がオープンした。これまでのBYD正規ディーラーはどれも他メーカーのディーラーやカー用品店の居抜き物件、商業施設の一角にテナントとして入ったり廃工場などを大幅に改修させたりしたものだった。だが、今回新たにオープンした拠点は更地の状態から建設された新築拠点だ。敷地内は最大4台ほどを展示できるショウルームと、納車スペース、洗車スペース、整備工場をまとめた建屋の2つで構成されている。出力50 kWの急速充電器1基と普通充電器が2基、ショウルームの外に設置されている。 港北ニュータウン自体は横浜市の内陸部に位置し、都筑区に所在する比較的開発が新しいエリアとなる。1990年代以降、横浜市営地下鉄の開業や周辺商業施設の整備、そして新興住宅地を中心とする「住みやすい街づくり」がなされ、近年では自動車部品サプライヤー「ボッシュ」といった世界的企業が巨大な拠点を設けるなど、目まぐるしい発展を歩み続けている。BYD AUTO 港北ニュータウンが面する「区役所通り」も国産車ディーラーだけでなく、それに沿ってジャガーやミニ、ロータス、マセラティといった名だたる輸入車ブランドもディーラーを開設している路線で、横浜市北部でもっとも自動車ディーラーが栄えている地域と言えるだろう。 BYD Auto Japanはこれまで、横浜市内では「BYD AUTO 東名横浜」「BYD AUTO 横浜中央」の2か所で営業を行ってきた。前者は東名高速道路や国道16号線、国道246号線が交わる地域で、ここもまた新車・中古車問わず多くの自動車販売店が進出しているエリアとなる。後者は横浜市の臨海部、中華街からそう遠くない伊勢佐木長者町の近くに位置し、今回の港北ニュータウン店のオープンで横浜市内全3拠点となり横浜市の北半分を満遍なくカバーできるネットワークが構築されている。 BYD Auto Japan株式会社の東福寺厚樹社長によれば、「BYD AUTO 港北ニュータウンが開業した地域は集合住宅だけでなく、戸建て住宅も多い。戸建ての方が自宅での充電環境を用意しやすいこともあり、電気自動車を販売していくにはぴったりな地域ではないか」とのこと。広大な森や公園も周辺には多く、クリーンなイメージを打ち出すBYDの電気自動車との相性も抜群だ。 今回新たにオープンした拠点と、日本におけるBYD正規ディーラー1号店の「BYD AUTO 東名横浜」を運営する株式会社アクセルの岡本二久社長に話を聞いた。 ――1号店である東名横浜との違いは? 「最も大きな違いは敷地内にサービス工場を設置したこと。1号店ではオープンから1年半経って各種の点検などで入庫いただく機会も増えてきたがサービス工場がなかったので別の工場で整備をしていた。港北NT店ではワンストップでお客様に迷惑をかけることなく一貫したサービスが提供できる」 「また、同社が販売してきた輸入車は機械式駐車場を有する集合住宅では好まれにくい傾向にあった。コンパクトカー『ドルフィン』は日本仕様として一般的な機械式駐車場にフィットするように作られており、集合住宅に住んでいる顧客からも好評だ。加えて、今回オープンした港北NTエリアは戸建てが多い地域である。普通充電器の設置や駐車スペースにも余裕があることから今年6月に販売開始したセダン『シール』や、これから投入される予定の大型車種なども売り込みやすい」 ――BYDはどのような車種と競合するのか? 「価格帯から言ってトヨタのbZ4Xとの競合が多いが、BYDのお客様は決めていただくまでの期間がとても短い。これから店が増えていき、充電設備などのインフラが整えばこれまで以上にBYDを選んでいただけると確信している。BYDはとにかく、お客様に乗っていただいて実際に体感していただくことが重要だと考えている。」 2023年1月の販売開始以来、BYD Auto Japanは約3500台の乗用車を受注してきた。そのうちの6~7%にあたる200台を株式会社アクセルが販売しているが、岡本社長はこの数字をなんとか20%まで拡大させたいとしている。また、株式会社アクセル自体は3つの販売エリアを任されており、その最後となるのが同社の本拠地が位置する「東京・調布エリア」となる。調布周辺での土地探しは難航しているとのことだが、当初の計画である「アクセル3店舗体制」がいったん構築されたら、周辺地域でBYDのクルマを見かけることも日常の一部となるだろう。 BYDは2023年、全世界で302万4417台のEV(含PHEV・BEV)を販売した。2024年に入ってからもそのペースは加速を続けており、2024年9月単月で41万9426台、2024年1~9月期で274万7875台を販売した。このままいけば、10月中にも昨年を上回る販売台数を記録するのは間違いない。日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によれば、日本での乗用車新規登録台数は2024年1~9月期で1742台を記録した。これは2023年の約2倍となる計算で、セダン「シール」の販売開始が大きく後押ししたと言える。 BYDシールは2024年10月上旬現在、約530台を受注している。下火傾向と言われるセダン市場、なおかつ日本での知名度もまだ低いBYDだが、これほどの台数を受注しているのは素直に驚きだ。シールは最初の1000台を特別価格で販売するというキャンペーンを打ち出しており、BYD Auto Japanの東福寺社長はなんとか2024年度末までに残りの400台強を売り切りたいと語った。 2025年以降は少なくとも毎年1車種以上の新規車種を投入していく方針を発表しており、すでに次なる日本導入車種と目される「シーライオン07(中国名:海獅07)」も日本国内でテスト走行をしている様子が目撃されている。また、2024年8月末に開催された成都モーターショー2024では、BYDブランド初のミニバン「夏」もお披露目された。株式会社アクセルの岡本社長もミニバン車種の日本投入を個人的に望んでいると語っており、「夏」もそう遠くないうちに日本へ導入されるかもしれない。 (文:中国車研究家 加藤ヒロト)