ヤバすぎる円安に「財務省の宇宙人」も手詰まりか…?「1ドル155円」突破でも日本が身動きとれない「4つの誤算」
「ドル全面高」では多勢に無勢
神田氏にとってもっと大きな誤算だったのは、米国の利下げ局面入りが遠のいたことだろう。 3月の雇用統計や消費者物価統計で米経済の底堅さと、しつこいインフレ圧力が確認されたことで、米連邦準備理事会(FRB)による6月利下げ説は事実上消滅。当初は「年内3回」と予想されていた利下げ回数も1~2回にとどまるとの見方が大勢となっている。それどころか、市場関係者の間では「年内利下げゼロ」とか「インフレ動向次第で逆に追加利上げもあり得る」との観測も浮上しており、足元で23年ぶりの高水準にある米政策金利(5・25~5・50%)は容易に下がりそうにない。 日米金利差が縮まらなければ、円売り圧力が収束しないのも当然だ。しかも、今回は高金利通貨であるドルが、円だけでなく、ユーロなど他の主要通貨に対しても強含む「ドル全面高」の様相を呈している。そんな中で日本が独り大規模な円買い介入に踏み切っても、多勢に無勢。「前回のように相場を有意に押し戻すことは困難」(米銀トレーダー)と見られている。 しかも、日銀がお札をドンドン刷れば理論上は介入原資をいくらでも得られる円売り・ドル買いとは異なり、円買い・ドル売りの場合は「日本が持つ外貨準備の範囲内でしか行えない」(財務省国際局筋)という制約がある。 日本の外貨準備(2024年3月末時点)は総額1兆2906億ドル(約198兆円)と潤沢とは言え、大半を米国債で保有しており、全額を介入につぎ込めるわけではない。国際金融マフィアの間の暗黙のルールでは、自国通貨を買い支えるために他国の通貨を売る場合、その国の長期金利に影響を及ぼさないようにするのがセオリーだからだ。 これに則れば、米国債には安易に手を付けられず、円買い介入の原資はドル預金の1550億ドル(24兆円弱)に限られることになる。前回同様に9兆円規模の介入なら2回程度がせいぜい。「無駄打ちは許されない」(財務省筋)という厳しい状況だ。 「前回の介入では米国債の一部も売却して円買い・ドル売りの原資に充てている」。神田財務官周辺筋からはこんな反論の声も漏れる。だが、今回は米国側が米国債売却をそうやすやすと容認するとは思えない。当時は2%の物価目標の達成がなお見通せないとして日銀が異次元緩和を継続し、日本が行き過ぎた円安に歯止めを掛ける手段は介入しかなかった。このため、イエレン米財務長官ら米当局側も神田氏の主張を受け入れた経緯がある。