老いた親を無意識に拘束してしまう人が使っている1つの言葉とは
「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。 ● 老いた親を無意識に拘束してしまう人が使っている言葉 【×】親へのNG声かけ「外出するときはちゃんと教えてよ! なにかあったらどうするの?」 【◯】親を傷つけない声かけ「3丁目の板垣さん。1人で外出して転んで骨折して手術だって。もう3ヵ月も入院してるんだって」 これは認知機能には問題がないものの「屋外方向は要介助レベル」と判断されている親がいらっしゃる方からのご相談で多いケースです。 NGの声かけについては、家族であれば日常的な言い方のように思います。また、親を心配する気持ちがあっての発言ですから、悪いことでは決してありません。 ですが、NGの言い方を続けてしまうとスピーチロック(speech lock)といって精神的虐待を与えてしまう可能性があります。スピーチロックとは言葉による拘束を意味します。 具体的には「ちょっと待って!」「~しないで!」など、相手の行動を制止または制限する言葉を指します。 「単なる声掛けじゃないか」と思うかもしれませんが、受け取った側からすると「かたちのない拘束」になってしまうのです。 スピーチロックは相手の意思を無視して命令する言葉全般が該当し、苦痛を与える行為となります。血のつながっている親子だからこそ遠慮がないため、うっかり使いがちです。
● 親は「過去のイメージ」で行動している 誰もが老いた親のことを心配しています。しかし一方で、親のことだけを見ている余裕もありません。自分にも家庭があったり、仕事があったりするからです。そのため、親の安全を確保しようとしたときには、どうしても親に「待ってもらう」場面が増えます。「外出するときには教えてよ!」というのは、その段取りをするためです。 ですが、高齢になると誰であれ前頭葉の機能低下がはじまり、ごく軽度でも認知的な問題を生じている場合があります。つまりは、皆さんに心配されなくとも「自分はまだまだ1人で行動できる」と考えてしまうのです。 老いた親は、若かりし頃の身体イメージと根拠のない自信を持っていることが多く、現在の身体状況を正確に理解できていない場合も少なくありません。さらに、お願いや注意を何度しても、自分の好きに行動することを繰り返す方もいます。 そんな親に「命令形」の伝え方をしても効果は見込めません。最悪の場合は、ケンカになってしまったり、親を拘束することになってしまいます。皆さんとしては「親には元気に外出してほしい。でもそのためには準備が必要」というだけで、行動を制限をしたいわけではないのですから、誤解されたくないですよね。