元妻が殺し屋を雇って…95年に起きた「グッチ家」最大のスキャンダルとは? レディ・ガガ主演の『ハウス・オブ・グッチ』原作と映画を解説(レビュー)
イタリアの世界的高級ブランドであるグッチはフィレンツェで1921年に創業。瞬く間に富裕層に受け入れられて大成功を収めた。第二次世界大戦後は大スターたちや米大統領夫人も顧客として名を連ね、世界を魅了したイタリア初のブランドとなった。100年以上の歴史を誇るグッチは、成長、隆盛、衰退、復活を繰り返して今に至っている。 【画像】レディ・ガガの大胆に開いた胸元には超高級ジュエリーが…『ハウス・オブ・グッチ』の裏話を見る 原作は、グッチ一族の長年にわたる確執とブランドの生き残りをかけた戦いを多くの証言と取材をもとに描いた出色のノンフィクションである。創業者グッチオ・グッチの息子たち、孫たち、彼らの妻たち、弁護士、銀行家、投資家、職人、デザイナー、従業員など多くの登場人物たちが繰り広げるプライド、情熱、欲、愛と憎しみの一大絵巻。週刊誌に取り上げられる日本の同族企業の権力争いや乗っ取り事件など子供だましに思えるほどだ。中でも、グッチ家最大の悲劇でありスキャンダルなのが、’95年に起きたマウリツィオ・グッチ殺害事件。元妻パトリツィアが殺し屋を雇って彼を殺したのだ。この殺人事件の顛末を描いたのが映画『ハウス・オブ・グッチ』。 マウリツィオは、創業者グッチオの四男ロドルフォの一人息子で、経営者となったものの莫大な赤字を出し、’93年にグッチを投資会社へ売らざるを得ない状況を作り出した人物。パトリツィアは野心溢れる女性で、グッチという名前の価値と莫大な財産への執着は凄まじいものがあった。自分からグッチの名前を奪い、他の女性と暮らす元夫への恨みが殺害の動機だった。 映画は正しい時系列で描いてはいないし、人物像には誇張や変更があるが、豪華出演者たちの迫真の演技が、ブランドの華やかさの裏にあった駆け引きや会話を見たり聞いたりしているようなドキドキ感を生む。特に、パトリツィアを演じたレディー・ガガのド迫力と目力に圧倒される。アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、アダム・ドライヴァー、ジャレッド・レトといったアカデミー賞などの映画賞受賞歴やノミネート歴を誇る一癖も二癖もある演技派スターたちを前に一歩も引けを取らないガガ様。恐れ入りました! [レビュアー]吉川美代子(アナウンサー・京都産業大学客員教授) 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
新潮社