賃上げしても「給料安い」と憤る若者の何が問題? 経営者と従業員との間にある「情報の非対称性」
統計で確認してみればわかる。「やりがい」よりも「お金」を重視する若者たちが増えているのだ。 「みんなの転職」サイトが調査した結果では、その傾向は20~30代の若者に顕著だ。その割合は2019年以降に逆転し、ドンドン差が広がっている。 ・2017年 お金(45%) やりがい(55%) ・2018年 お金(48%) やりがい(52%) ・2019年 お金(51%) やりがい(49%) ・2020年 お金(52%) やりがい(48%)
・2021年 お金(50%) やりがい(50%) ・2022年 お金(56%) やりがい(44%) ・2023年 お金(59%) やりがい(41%) 「衰退途上国」とまで言われる日本に希望を持てなくなった、ということだろうか。ロマンチストよりもリアリストの若者が増えている。 もちろん、「お金」も「やりがい」も両方を満たしたい。しかし、どちらかを選べと言われたら「お金」と答える人のほうが増えている、ということだ。
それに、誰だって「仕事に求めるものは何か?」と質問されて、「お金」とは、なかなか答えられない。相手の心象や周りの目も気になる。だから、 「私はお金よりも、やりがいを重視したいです」 と部下に言われても、それが本音かどうかわからない。超採用難の時代は今後もずっと続く。若者に対する誤解や勘違いは、会社の存続を揺るがす大きな問題となる。 ■「賃金」に関わる3つの無理解 今回の賃上げについて案の定、一部の管理職やベテラン社員は勘違いしていた。若者たちが「お金よりも仕事のやりがいを重視している」という誤解だ。だから、
「賃上げよりも、やりがいを優先させる方針をとるべきだったのか」 とある部長が発言したが、社長は一蹴した。 「20代前半の社員全員と面談した。不満はすべて『賃上げが物足りない』だった」 社長はかなり残念そうだった。今回の取り組みに協力してくれた人事労務のコンサルタントは、 「社長は思い切った判断をされました。胸を張ってください」 と勇気づけた。では、いったいなぜこのような事態になったのか。理由は極めて単純なものだった。それが社長と若者との間にある「情報の非対称性」である。