「1週間」で「1カ月分」売れた! 書店の〝嬉しい悲鳴〟の理由は…3代続く店の秘策
「来店のきっかけに」
そもそも、正和堂書店でブックカバーを配り始めたのは「お客さんがお店に来るきっかけにしたい」という思いからでした。 「かつては定期的に発行される雑誌があることが、町の本屋さんへの来店のきっかけでした。しかし、雑誌が売れにくくなった昨今、それがなくなってきました」(小西さん) なんとか来店のきっかけをつくれないかと、同書店では2017年からSNSで本の紹介を始めましたが、それが集客につながっている実感は持てずにいました。 本の紹介をするだけではだめだと気付いた小西さんは、とオリジナルブックカバーの製作を思いつきます。 はじめは「SNSを見た」と言ってくれるお客さんにだけプレゼントしていたブックカバーでしたが、コロナ禍で来店が難しくなった時期、「オンラインで売ってほしい」という声が届き始めたのだといいます。 元々、ブックカバーはサービスで付けるという書店独自の文化がある中で、「販売していいんだろうか」と悩む気持ちがあったという小西さん。ですが、「購入したい」という声に押され、試しに販売をしてみると、売れ行きは上々だったといいます。 いまとなっては、作ったブックカバーは店頭でのプレゼントが1割、店頭やオンラインでの購入が9割となっているそうです。
プロダクトから読書へのアプローチ
50年以上続く家業を見てきた小西さんは、「町自体は発展していますが、それにともなって、お客さんが増えているかというと、そうではない。逆に減っているくらいです」と書店の苦境を語ります。 一方で、ブックカバーがきっかけで店頭に足を運ぶ人の存在も、確かに感じているのだといいます。 「いま、お客さんの4分の1から3分の1は生活圏外から来てくれています。旅行鞄を持って来店してくれる人は毎日のように見かけますし、SNSを見たと声をかけてくれる人もいます」 ブックカバーの集客効果を感じつつ、読者にとっても「読書を楽しむツールになるとうれしい」と小西さん。 「本を読むのが楽しくなった」「ブックカバーがあるから、久々に本を読もうと思った」という声をSNSで見かけることもあるといい、「プロダクトから読書につなげるアプローチがあってもいいなと思っています」。 いまや、お店で本を購入する人の8割から9割がオリジナルのブックカバーのプレゼントを希望するようになっているといい、月に6千枚ほどをプレゼントしているそうです。