これが住宅?ピカソにウォーホル、シャガール、美術館級のアートが!非日常の空間が広がる豪邸が完成するまで
田中さんは既存建物1階のLDK+和室という間取りをDK+バスルーム+離れのリビングに変更。増築した棟に玄関と応接室が設けられました。 田中さんが慎重に検証したのがリビングのボリューム。日常のハレの場となるよう、景観を生かす開放感と視線のヌケ、家具を配置したときの間延びしない余白などを優先した結果、天井高3.5mの2面開口のリビングが生まれました。
アンディ・ウォーホルの作品とインテリアが繊細に共鳴する
この住まいの魅力をさらに高めているのがアート。作品選定のアドバイスは、経験豊富なベイスギャラリーの大西利勝さんが担いました。 「建築が無二の眺望を生むのと同じように、家のなかに住み手だけの景観をつくるのが絵画の役割といえるでしょう。アートは住まいを唯一の場所にする道具です」。大西さんは複数の候補を空間の使用目的やインテリアに合わせてNさんに解説しながら提案しました。 玄関ホールから通路に出る正面の壁に、酒と収穫を祭る祝祭をテーマにしたパブロ・ピカソの「バッカナール」(1959年)を配置。 エントランスホールから応接室に入ると正面に見えるのが、マルク・シャガールの作品「笛吹きピエロ」(1957年)。 リビングのフォーカルポイントになっているのは作家、伊庭靖子の作品「無題」(2008年)。 ダイニングには桃を描いたアンディ・ウォーホルの「Peaches」(1979年)。 応接室のアートはスペインの画家、ジョアン・ミロの「岸壁の軌跡 IV」(1967年)を選びました。
建物と共に景観をつくる外構は、地元の3人の若手デザイナーによる協業。約3カ月がかりでインスタレーションのような芝庭が生まれ、Nさんの樹木に対する知識も深まりました。
Nさん夫妻はリノベーションと増築を機に、建築やアートについて家族と会話できるようになったことが何よりの喜びといいます。また、人を家に招く機会も増え新たな交友も生まれました。家は人を育てる――。各ジャンルのプロが結集し、内外の美しい景観だけでなく、多くの恩恵がNさん夫妻にもたらされています。