これ以上は、もう無理…限界まで成長しきった雲でわかる「大気の境」。なんと「成層圏まで飛び出す」“やんちゃ”もいた
「~層雲」という名の雲たち
次に、層状に平らに広がる「~層雲」という名前のついた雲を見ていきましょう。上層には、巻層雲(けんそううん)ができます。厚さが薄く、雲の粒の密度も小さいので空が透けて見え、薄いベールをかけたようです。太陽の光もほとんど遮られません が、空が白っぽく見えるので、「薄曇り」の天気となります。 雲の粒はすべて氷の結晶でできており、氷の結晶に入射する太陽光が内部で規則的に屈折、反射することが原因となって、太陽のまわりに「暈(かさ)」とよばれる大きな光の輪が見られることがあります。 中層には、もっと厚い層状の雲ができ、高層雲(こうそううん)とよばれます。比較的薄いときは太陽や月の形が透けて見え、「おぼろ雲」とよばれます。厚くなると、空全体を灰色に覆って曇り空になります。高層雲がもっと厚さを増し、下層や上層にまで広がると乱層雲(らんそううん)とよばれるようになります。乱層雲は本格的な雨をもたらす雲です。 下層には、層雲(そううん)ができます。層雲はとても低くできることがあり、地上に接してできるときは霧とよばれます。霧は、空気が上昇して発生する雲とは異なり、冷たくなった地表がその上の空気を冷やすことで発生します。 層雲は、地表の霧や飽和する直前の空気の層が弱い上昇気流で上空にもち上がってできます。「霧雲」とよばれることもあります。すべて水の粒でできており、大きくなった雲の粒がゆっくり落下して「霧雨」になることがあります。 もっと高い雲からこのような粒が落下しても途中で蒸発して消えてしまいますが、層 雲は、雲の中でもできる高さが特に低いため、霧雨を降らすのです。 層雲から降る霧雨と、積乱雲や乱層雲から降る本格的な雨とは、雨粒のでき方がまったく異なります。このことは、雨がどのようにして降るのかを考えていくとわかってきます。筆者らの『図解・気象学入門 改訂版』でていねいに解説しましたので、ぜひご一読ください。 ここでは、いったん成層圏など、雲の上の、高層の大気に話を戻して、高層大気をどのように観測し、そこから何がわかるのか、を解説していきます。 *次回は、高層大気の観測技術と、高度によって違う気圧と気温からわかる気象についての解説をお届けします。公開は 6月14日(金)の公開予定です。 ---------- 図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか 図解・気象学入門 改訂版 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 気象予報の話を中心に、気象現象の原理に迫る『図解 天気予報入門』。一方、気象にまつわる素朴な疑問から、気象と天気の複雑なしくみまで、その原理を詳しく丁寧に解説した『図解 気象学入門』。どちらも「しくみがわかる」入門書です。もちろん、2冊読めば、さらに理解が深まります。 ----------
古川 武彦(「気象コンパス」代表者)/大木 勇人