これ以上は、もう無理…限界まで成長しきった雲でわかる「大気の境」。なんと「成層圏まで飛び出す」“やんちゃ”もいた
「十種雲形」そのほかの雲の性質
十種雲形のひとつ巻雲は、対流圏の最も上層にできる刷毛ではいたような雲です。この雲は、上層で水平に吹く風が緩やかに上昇する部分にできたり、風の乱れの中で空気が膨張して冷やされるなどしてできます。 上層の空気は、含む水蒸気量がもともと少ないことが特徴です。つまり、上層の低い温度では少ない水蒸気量で飽和し、空気が薄い分だけ水蒸気量も少ないのです。このため雲の粒は、中層や下層のように多くは生じず薄い感じになり、一般に強い上層の風に流されて、筋状になります。 また、巻雲はすべて氷晶でできています。巻雲の比較的濃い部分から尾のように伸びる筋は、巻雲をつくる氷晶が落下しながら風で流れる姿の場合があります。航空機に乗って窓際の席に座ったら、巻雲を観察してみましょう。巻雲から氷晶が落ちるようすを確認できることがあります。 このほかの雲は層状の雲です。できる高さによって、上層、中層、下層に分けることができますが、ここでは雲の形と呼び名に注目して2つに分けて見ていきましょう。
「~積雲」という名の雲たち
初めに、団塊状の雲が層状に広がる「~積雲」という名前のついた雲を見ていきましょう。このような雲のうち、上層にできるものは巻積雲(けんせきうん)といい、小さな団塊状の多数の雲が空の高いところに広がって見えます。雲の粒はすべて氷の結晶であり、濃度が薄いので光が透けて明るい白色に見えます。巻積雲は、魚のうろこのように見えることから、「さば雲」や「いわし雲」などともよばれます。 これより低い中層にできるものは、高積雲(こうせきうん)といいます。この雲は、巻積雲に比べて団塊が大きく、やや厚さがあり、濃い感じに見えます。雲の粒は、水の粒または氷の結晶でできています。羊の群れのように見えることから、「羊雲」などともよばれます。 下層では、小さな積雲ほどの大きさの団塊が空にたくさん敷き詰められた層積雲そうせきうんができます。積雲がたくさんあるようすと層積雲とでは区別が明確にできないことがあります。雲底が畑の畝うねのように並んで見えることから、「うね雲」ともよばれます。普通、すべて水の粒でできており、厚さもあるので、雲底が少し黒っぽく見えます。