【ジャパンC】「この馬なら…」武豊とドウデュースはイチロー氏のレーザービームのように伸びた
<ジャパンC>◇24日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走14頭 世界に誇る日本の最強馬だ-。武豊騎手(55)騎乗の1番人気ドウデュース(牡5、友道)が、直線早め先頭からG1・5勝目を挙げた。勝ち時計は2分25秒5。 【写真】イチロー氏と笑顔で抱き合う武豊騎手 道中は折り合いに苦しんだが、3角過ぎから動く立ち回りで衝撃的な上がり3ハロン32秒7を記録。海外馬3頭を含む強力ライバルを封じ込めた。同馬は年内引退を表明済み。最後の有馬記念(G1、芝2500メートル、12月22日=中山)を勝って現役生活を締める。 ◇ ◇ ◇ 覚悟を決めて、握りしめた手綱を緩めた。勝負の3角。武豊はドウデュースとの上昇を決断した。「この馬なら、なんとかもつんじゃないか。もってくれという気持ち」。並みの馬じゃない。能力も、鞍上にとっても特別な馬。4角を回りながら、トップスピードに乗せた。G1・6勝馬オーギュストロダン、2冠牝馬チェルヴィニアをパスする。残り300メートル。目標にすべき馬はいなくなった。日本中に、いや世界中にその強さを見せつけた。 府中の杜(もり)に一層厚みを増したユタカコールがこだまする。「ホッとしました。着差こそ2着とはあまりないけど、内容はかなり濃い。今日のところはこれが(今までで)一番と言いたい」。耐えてつかんだG1・5勝目だ。隊列の入れ替わりはあっても、シンエンペラーがつくった1000メートル62秒2は明らかに遅い。「ペースが遅すぎて、かなり馬が全力で行きたがって抑えるのに苦労した」。脇を締め、緩み続けた流れをこらえた。リミットは大欅(おおけやき)奥のラスト4ハロン。あとは底力を信じるだけだった。上がり3ハロン32秒7。天皇賞・秋は史上最速の同32秒5。今度は史上最速タイの脚で勝ちきった(過去に12年3着ルーラーシップが記録)。 ともに歩んだ道の終わりが近づいている。今夏、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念での引退が発表された。デビュー38年目。今も勝利への意欲は衰えないが、ドウデュースが日々に彩りを与えてくれる。「競馬が大好きで勝ちたい気持ちがキープできているので、それが一番。こういうすばらしい馬に出合うと、そういう気持ちが高まって毎日楽しくなる」。デビューから負傷離脱を除いては、全てのレースで手綱を取ってきた。別れにさみしさはある。「1戦1戦を大切にしなきゃと思って、かみしめるように乗っています」。 だから、最後まで突き進む。ラストランは有馬記念。「順調なら秋3戦で終わりと聞いたとき、3つとも勝ちたいという気持ちがありました。当然、馬が無事なら出走して勝ちたいです」。史上3頭目の古馬3冠制圧、同5頭目の連覇がかかる一戦が待つ。すでに十分な実績を積んだが、見据えるのはさらなる高み。歴史的名馬の域に到達した最強馬はグランプリで大団円を迎える。【松田直樹】 ◆ドウデュース ▽父 ハーツクライ▽母 ダストアンドダイヤモンズ(ヴィンディケイション)▽牡5▽馬主 (株)キーファーズ▽調教師 友道康夫(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 15戦7勝(うち海外3戦0勝)▽総獲得賞金 17億7587万5800円(うち海外2239万6800円)▽主な勝ち鞍 21年朝日杯FS(G1)22年ダービー(G1)23年京都記念(G2)有馬記念(G1)24年天皇賞・秋(G1)▽馬名の由来 勝利目前(する+テニス用語) ◆レジェンド表彰式 競馬界と野球界の“レジェンド”に沸いた。イチロー氏(51=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が表彰式のプレゼンターを務め、ドウデュースで制した武豊騎手と壇上に立った。イチロー氏が現役時代に見せた“レーザービーム”のような、どこまでも伸びていく、ドウデュースの末脚。以前から親交のある2人の夢の共演となった。