<海のはじまり>「伝わらないことを怖がらない」せりふ選びのこだわり プロデューサーが大事にする「silent」紬の言葉とは
◇「いろんな人がいる」ことを念頭に置いた作品作り
そんなふうにせりふを作り上げていく中で、村瀬さんが大事にしている“ある言葉”があるという。
「『silent』で、主人公の青羽紬(川口春奈さん)が口にした『“少ない”っているってことだもんね』という言葉を、僕はドラマを作る上で大事にしています」
このせりふは、「silent」第7話で登場。もともと耳が聞こえていた人は手話を使わず、声を出してコミュニケーションを取ることが多いと知った紬は、中途失聴者の佐倉想(目黒さん)に、どうして声を出さないのか尋ねてしまう。紬は「多いってだけで、それが普通なんだって思い込んじゃって。それで佐倉くん、何でなんだろうって気になって聞いちゃって。“少ない”っているってことだもんね。いるよね、いるのに」と反省した。
村瀬さんは「『いちばんすきな花』でも描かれていましたが、みんな何かを決めつけたがる。先入観や知識で決めつけたがるけど、そうではない、そうじゃない人もいる。いろんなパターンがあって、いろんな人がいるということ、これは生方さんの描くテーマの一つでもあると思っています。『“少ない”っているってことだもんね』ということをいつも意識して、生方さんの脚本を受け止めて、世に送り出しています」と語った。
実際に放送を通じて、視聴者からは「せりふが胸に刺さる」「せりふのひとつひとつが丁寧で優しくて、時に考えさせられる」といった声が上がっており、制作陣のこだわりがしっかりと届いている。異例の全12話という長さで描かれるドラマも残り1話。夏や弥生にどんな展開が待ち受けているのか、繊細な物語をじっくりと味わいながら、最後まで見届けたい。