耳の奥の「キーン」を放置しないで!更年期以降の人に急増する、危険な梅雨シーズンの“耳鳴り”
最大の対策は「ストレス軽減と自律神経を整える」
近年の研究では難聴の有無にかかわらず、耳鳴りを悪化させる要因がわかっている。 「大きく関与しているのがストレス。ストレスの多い生活をしていると、脳内の中枢性自律神経ネットワークが興奮状態になり、その影響を受けて脳の聴覚に関する部位も興奮します。そのせいで音に敏感に反応するようになり、耳鳴りを起こしてしまうのです」 疲労や睡眠不足も関連することが明らかになっている。 健康な20代に対するある実験で、まず無響室(音の侵入や反射・反響のない部屋)に入ってもらうと、全員が「シーン」や「サー」などの生理的耳鳴りを自覚。 その後、普通の部屋に移動し、PCでの入力作業を深夜から朝にかけてやってもらい、相当負荷がかかった状況に。徹夜のまま再び無響室に入ってもらうと、全員が作業前よりもはるかに強い耳鳴りを自覚。 その後、別室にてゆっくり睡眠をとってもらったところ、起きたときには全員の耳鳴りが消えていたという。 「この実験では、急に大きなストレスがかかり、しかも眠れないことで脳が疲労困憊(こんぱい)し、普段は1にも満たない耳鳴りのレベルが100倍、1000倍に跳ね上がったのです。しかし、その後たっぷり眠って疲れとストレスがリセットされると耳鳴りは消失しました。 このことから、ストレス、寝不足、疲れの3つの要素が耳鳴りの大きな原因ということが裏付けられたといえるでしょう」 これは難聴がある場合も原理は同じ。 「中高年に多い難聴があるタイプの耳鳴りでも、3つの要素が重なると、おのずと耳鳴りが強くなります。ですから、耳鳴り対策の基本は、ストレス緩和、そして睡眠不足解消によって脳の疲れをとること。 また、3つの要素と密接に関係している自律神経を整えるケアも有効です」
補聴器や鍼灸治療で改善する可能性も
では具体的にはどんなケアをすればいいのか。 「難聴が原因の耳鳴りは、補聴器を使うことで軽減することがあります。補聴器で必要な音を十分聞き取れるように調整することで脳の過敏性が軽減され、耳鳴りが改善するのです。 耳鳴り専用の補聴器もあり、おすすめしていますが、メガネに比べて抵抗を感じる人が多いですね」 さらに、十分な効果が期待できる補聴器は価格が10万円以上するため、なかなか手が出せない人も。ほかに効果が期待できるのが鍼灸(しんきゅう)。 「皮膚は交感神経の支配を受けており、交感神経は圧の変化で血流や発汗を調整しています。経絡(けいらく・ツボ)への鍼灸により皮膚の下に微細な圧がかかると、血管が拡張され血液の循環がアップ。その結果、身体の緊張と脳の疲れが癒され、耳鳴りが緩和するのです」 また、手軽にできる対策として自律神経を整える効果が期待できる「耳ねじり」や「ホワイトノイズを聴くこと」もおすすめ。 人生や生活の質の低下を招かないためにも、早めの対策を講じよう。 耳鳴りをラクにするお手軽ケア 難聴の有無にかかわらず、ストレス・睡眠不足・疲れは耳鳴りを悪化させてしまう。生活習慣の見直しとともに、以下に紹介する自律神経を整えるケアを取り入れてみよう。