【独自取材】「人が死ぬほど売れる」フェンタニルにさらに“強力薬物”混入も…史上最悪の麻薬で街が“ゾンビタウン化”トランプ新大統領の決断(後編)
「人が死ぬほど違法薬物は売れる」
アリスさんの支援者の一人であるガードナーさんは、ケンジントン地区に2017年頃から住んでいる。違法薬物の売人達は、様々な薬物にフェンタニルを混入させて、依存度を高めることで、薬物中毒者を生み出していると指摘する。 「フェンタニルは非常に危険だ。あらゆるものに含まれている。マリファナにも混ぜられている」 事実、勉強に集中するための薬と渡された薬にフェンタニルが混ぜられて、子どもが死亡するケースや、安易に購入した薬物にフェンタニルが混入され、中毒に陥った事件などは枚挙にいとまが無い。違法薬物はSNSを通じて簡単に手に入るという。さらに、売人達は自分たちの顧客が死ぬことをいとわないとも説明し、むしろそれくらい強い効果の違法薬物が人気だと嘆く。 「究極の高揚感は、まさに生と死の狭間にある。麻薬ビジネスで大金を稼ぎたいのであれば、顧客を数人殺すことだ。摂取すれば間違いなく死ぬ。しかし、完璧なハイはまさに生と死の間にある」 ガードナーさんはさらに、政府が薬物中毒者に薬を処方していることにも疑問の声を挙げる。薬物中毒者がその処方された薬を転売し、その金を元に違法薬物を購入しているというのだ。
「死体がどんどん生まれている」
取材を終えて帰ろうかという時に、1人の黒人男性と知り合った。彼も薬物依存からの回復の途上にあるという。フェンタニルによって薬物中毒に陥る若者が増えている現状を教えてくれた。 「私も、注射針を腕に刺していた一人だ。しかし、7年前にここに来たとき、フェンタニルやヘロインは軽い気持ちで手を出せるようなものではなかった。今は死体がどんどん生まれている。もう何年もこの状態が続いている。16歳や17歳の若者がここに来て、薬物に染まっている。素晴らしい家庭に育ち、暮らしていたとしても、一度ここに来たら二度と故郷には戻れない。そして、彼らは愛する人を失い、その人を探し、傷つき、苦しむ」 彼は最後に政府に早急な対策を求めた。 「この国では違法なフェンタニルは作られていない。しかし、この国にどんどん入ってきていて、それを止めることができない。他の麻薬と同じだ。解決策が必要だ」 バイデン政権も国境を不法に越えて持ち込まれるフェンタニルの対策に注力し、死者は減少傾向にあるという。しかし、劇的な改善にはまだほど遠いのが現状だ。トランプ氏は強硬な対策で撲滅に意欲を示すが、第一次政権時代には「何も対応できなかった」と、期待外れに終わることへの懸念の声も挙がる。 トランプ氏は約束通りにアメリカに入る違法薬物を阻止できるのか。新政権は早々に大きな課題に直面することになる。 (FNNワシントン支局 中西孝介)
中西孝介