イスラエル奇襲を首謀か ハマスのガザ地区指導者シンワル氏
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【12月5日 AFP】イスラム組織ハマス(Hamas)のパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)トップ、ヤヒヤ・シンワル(Yahya Sinwar)氏(61)は、ハマスの治安機関を率いたほか、イスラエルの刑務所で長らく収監された後、指導者の座に就いた。 イスラエル側は、同国史上最悪の襲撃事件となった10月7日の攻撃を首謀したのがシンワル氏だと断定し、同氏を「死刑囚」と呼んでいる。奇襲があった同日以降、姿を見せていない。 フランス・パリにあるアラブ政治研究センター(CAREP)のレイラ・スラ(Leila Seurat)氏は、恐らくは1~2年の計画期間を要したハマスの奇襲攻撃について、「皆の虚を突き、パワーバランスを変えた」と分析する。 シンワル氏と獄中で数年を共に過ごしたという、アブアブダラと名乗るハマスのメンバーによれば、シンワル氏は「卓越した」安全保障の運用家だという。 アブアブダラ氏は2017年、シンワル氏がガザ地区指導者に選出された後、AFPの取材に対し、「シンワル氏は最大限の冷静さで判断を下すが、ハマスの利益を守ることに関しては絶対に譲歩しない」と語っていた。 ■内通者を処刑 イスラエル軍報道官はシンワル氏を「悪魔の顔」と呼び、「死刑囚」だと宣告した。 シンワル氏はガザ地区南部のハンユニス(Khan Yunis)難民キャンプで生まれ、第1次インティファーダ(反イスラエル闘争)が始まった1987年にアハメド・ヤシン(Ahmad Yassin)師が組織を創設した頃にハマスに参画した。 シンワル氏は翌年にハマスの治安機関を設立。イスラエルに情報提供したとされるパレスチナ人を見つけ出し、処刑を含めて容赦なく制裁を加える情報部門を率いた。 イスラエルのメディアに掲載された治安当局者の尋問記録によれば、シンワル氏はハンユニスの墓地で内通者の首をスカーフで絞めたと自白している。 ガザのイスラム大学を卒業したシンワル氏は、23年間にわたって収監されたイスラエルの刑務所で完璧なヘブライ語を習得し、イスラエルの文化と社会に精通しているといわれる。 イスラエル兵2人を殺害したとして終身刑4回の刑に服していたが、2011年にイスラエル軍のギラド・シャリート(Gilad Shalit)曹長との交換で、パレスチナ人1027人のうち最高位の人物として釈放された。 釈放後にはハマスの軍事部門、イザディン・アルカッサム(Ezzedine al-Qassam Brigades、カッサム旅団)の幹部を務めた。前任者はハマスが世界に対して穏健な姿を見せるよう努めていたのに対し、シンワル氏はより暴力的な手段でパレスチナ問題への関心を高めようとした。 ■過激だが実利的な面も シンワル氏は、ガザ地区とイスラエル占領地であるヨルダン川西岸(West Bank)、イスラエルが併合した東エルサレム(East Jerusalem)での単一のパレスチナ統治体制を支持するようになった。 シンワル氏がガザ地区指導者に選ばれた2017年、ハマスは初めて1967年以前の境界線に基づくパレスチナ国家樹立を原則受け入れた。ただし、イスラエルの存在を認めず、歴史的なパレスチナ全域を「解放」するという最終目標は堅持した。 英シンクタンク「欧州外交評議会(European Council on Foreign Relations)」によれば、シンワル氏は2006年の評議会選挙後に派閥闘争を繰り広げたパレスチナ解放機構(PLO)主流派のファタハ(Fatah)との和解を妨害する者に制裁を加えるとの立場を示していた。 ハマスとファタハの和解は依然不安定な状況にあるものの、パレスチナ人受刑者の釈放によりハマスのヨルダン川西岸での人気は急上昇している。 前出のスラ氏によれば、シンワル氏は「軍事政策に関する立案では過激であり、政治では実利的」な立場を取ってきた。「軍事力の行使そのものが目的ではなく、(イスラエルとの)交渉を実現するために軍事力の行使を支持している」という。 シンワル氏は、カッサム旅団のモハメド・デイフ(Mohammed Deif)最高司令官と同様、2015年に米政府の「国際テロリスト」の最重要指名手配リストに加えられた。 治安筋によると、シンワル氏とデイフ氏は共に、イスラエルの爆撃に耐えるよう建設されたガザ地区の地下トンネルネットワークに潜伏している。 シンワル氏を「見つけ出して排除する」と宣言したイスラエルのヨアブ・ガラント(Yoav Gallant)国防相は、ガザ住民に対し「もしわれわれよりも先に(シンワル氏)を見つけ出したら、戦争を早く終結させることになるだろう」と述べ、同氏の引き渡しを求めた。 映像は2017~2023年4月に撮影されたシンワル氏の資料映像。(c)AFPBB News