3児の母・杏さんが考える「嘘は悪いこと」と言えるのか
2022年にフランス・パリと東京の二拠点生活を開始。以来、パリと東京を行き来しながら精力的に活動している杏さん。最新作となるのは、ある嘘をきっかけに運命が大きく変わっていく女性と少年との絆を描いた映画『かくしごと』(6月7日公開)だ。 【写真】杏さんが演じる千紗子の生活がここから一変…少年との出会いの場面 杏さん演じる絵本作家の千紗子は、認知症の父と暮らすために田舎に戻ってきた女性。夏のある日、事故で記憶を失った少年に出会うが、彼の体には明らかな虐待のあとがあった。少年を守るべく、「私はあなたの母親だ」と嘘をついて一緒に暮らし始める千紗子。3人で暮らす日常は思いがけず穏やかで幸せなものとなっていくが、そんな生活が長く続くはずもなく、事態は思わぬ方向へと進んでいく。 親の介護や子どもの虐待など、現実にも身近な問題をテーマにした本作。自身も3人のお子さんを育てる立場であり、「今の自分だったらできるかもしれないと感じた」と語る杏さんに、千紗子という役柄と向き合って得た気付きや子どもを守ることについてなど伺った。
母としても数年の積み重ねがある今の自分なら
今回、重くシリアスなシーンが多い役どころに挑戦した杏さん。本作への出演を決めた理由とは。 「脚本を最初に読んだ際、ラストが特に面白く、『これを映像化したらどうなるんだろう? 』と思いました。難しいシチュエーションではありますが、『一人の人間として36年生きてきて(撮影当時)、母親としても数年の積み重ねがある今の自分だったらできるかもしれない』と感じたことが大きいです。 それと同時に、私自身ニュースを観ていて、様々な環境にいる子どもたちへの思いが年齢を重ねるにつれて変わってきた自覚があるので、千紗子を演じる際にそういった意識を反映できるのではないかという気持ちもありました。 たとえば、子どもが苦しむニュースを見たら『この子を守ってあげたかった』と思いますし、もし目の前にいたら『温かいご飯をあげて、抱きしめてあげたい』と思います。でも実際は、すでに何かが起きてしまったからニュースになっているわけで、そこで自分にできることはなく、歯痒さを感じることが多いのが現状です。 ところが千紗子はそれをひっくり返して、少年と真っ直ぐ『親子として』関係を築いてしまう。築いて『しまう』と言ったのは、それが果たして良いことなのか悪いことなのか、正解なのか否か、一概に断じるのが難しいからです。映画をご覧になる方にも『これは良かったのか悪かったのか』と考えながら、ミステリーとして観ていただける作品だと思っています」