ユニークな商品名は「お客様の声から生まれた」 但馬の食材を生かす、調味料の誕生秘話
平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、調味料の製造・販売を行う株式会社トキワの代表取締役・柴崎明郎(あきお)さんが出演。同社の歴史や商品開発の経緯、社員の多様性などについて語った。 【関連】兵庫・香美町にカニの季節到来 ブランド「香住ガニ」でふるさと納税12億円 浜上勇人町長 同社は、1912年に創業し、今年で112年目を迎える老舗企業。 兵庫県香美町(旧香住地域)で、しょうゆや酢の製造を行ってきた。 大手メーカーによる大量生産や全国流通網が広がるなか、商品を普通に作るだけでは存在価値を持ち続けるのが難しい時代もあったが、地域の食材や技術をいかした新商品開発に取り組んできた。 代表商品が、「べんりで酢」シリーズ。これ1本で手軽に料理が楽しめるという合わせ酢調味料だが、商品が誕生したのは、地元の水産加工業者からの依頼がきっかけだったという。 「(きっかけは)『駅弁のかに寿司用合わせ酢を作ってくれないか』という依頼でした。納品後にいろいろな意見をいただくなかで、“家庭で酢の物料理を作る際、酸味と甘みのバランスを再現することは難しい”ということがわかりました。商品名の『べんりで酢』は、お客様からの『これで料理をすると夫も食べてくれる。便利だわ!』というお声をそのままいかしたネーミングにしました」(柴崎さん) 以降、自然由来の材料にこだわり、地元食材をいかす調味料を数多く開発。かにすき用だし「お母さんの味 え~だし」や、但馬牛すき焼き用割り下「なんでもごたれ」など、ユニークなネーミングも同社のアイデンティティだ。 新商品「ボーノ」は洋風のトマト風調味料で、「これからの時代、誰もが簡単に家庭料理に参画できるよう洋風のバリエーションを増やしていきたい」との思いから開発。「小さな幸せを食卓に創造するお手伝いをしたい」と、社員が力をあわせて開発に取り組んでいる。 そんな同社を支える社員は、約6割が女性。年齢も幅広く、和気あいあいとした雰囲気のなかで働いているという。柴崎さんは、「家庭料理を扱う会社ですので、女性の率直な意見は貴重。そして、(社員には)“いいものをシェアしたい”という思いが強い」と分析した。 「良い商品開発を進めるには、他者に寄り添うことが肝要」という考えから、同社では昨年、社員研修として平田オリザさんによるワークショップを実施。74人の社員が、演劇的手法を用いたコミュニケーション研修を通して他者の視点を理解し、新たな価値を生み出すことの大切さを学んだという。 社員からは、「異なる背景を持つ人同士がイメージを共有することの大切さを学んだ」「異なる価値観を共有し認め合うことで、つながりあえる。そこから新たなイノベーションが生まれると思う」などの声が寄せられた。 平田さんも、「製造部門、営業部門、総務部門など、みなさんが参加してくれたのが良かった。私も楽しみながら進めることができました」と研修を振り返った。 最後に、地域との関わりについて、柴崎さんはこのように語った。 「自然の豊かさから育まれる但馬牛、香住ガニ、松葉ガニといった、全国に誇れる一級の食材が但馬の何よりの魅力です。そして、この地の歴史が紡いできた各地の文化・産業の在り方は自然の移ろいとともにあります。但馬の自然に感謝しながら、足元には磨けば光る素材があることを肝に銘じて、これからも“誰もが簡単にできる健康な食卓づくり”を応援できればと思います」(柴崎さん) ※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2024年10月17日放送回より
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