企業業績、4年ぶり減益 車認証不正、中国の弱さ重し トランプ氏の政策警戒・24年9月中間〔深層探訪〕
上場企業の業績に不透明感が漂っている。2024年9月中間決算は、車の認証不正や中国経済の弱さなどが製造業の重しとなり、純利益は全体で前年同期比4.9%減の19兆9021億円と、コロナ禍を経て続いてきた増益基調から一転、4年ぶりの減益となった。半導体関連やインバウンド(訪日客)需要などに明るさが見られるものの、米国のトランプ新政権の政策次第では打撃を受ける恐れもあり、経営者らは警戒感を強めている。 【写真】オンライン記者会見で発言する日産自動車の内田誠社長 SMBC日興証券が11日時点の東証株価指数(TOPIX)採用1080社の9月中間決算(開示率76.4%)を集計した。安田光チーフ株式ストラテジストは「輸出企業の収益を支える円安が夏場に一服したほか、中国景気の弱さと米国の高い金利水準の影響で製造業の設備投資が活発化していない」と分析。「負のサプライズが多い決算だ」と指摘した。 ◇日産、通期予想は「未定」 製造業は9月中間純利益が10.4%の大幅減。トヨタ自動車は26.4%減の1兆9071億円となった。認証不正による生産停止で販売台数が減少、ダイハツ工業などを含むグループの通期販売計画を1085万台と従来比10万台下方修正した。 日産自動車も純利益が93.5%減の192億円に落ち込んだ。北米で需要が拡大するハイブリッド車(HV)を製造していないことや、中国での販売不振が響いた。25年3月期の純利益予想も従来の3000億円から「未定」に変更。内田誠社長は「ブランド力を高めないと存在感の面で厳しい」と語り、世界で9000人の人員削減に踏み切る方針を明らかにした。 日本製鉄も中国の過剰生産が指摘される鋼材の出荷が低迷し、9月中間の純利益は18.9%減の2433億円。米鉄鋼大手USスチール買収の交渉役も担う森高弘副会長は「足元(の経営環境)は極めて厳しい」と語った。 ◇旅客、海運は堅調 人工知能(AI)ブームの追い風に乗る企業もある。半導体検査装置の世界的大手アドバンテストは増収増益。ダグラス・ラフィーバ・グループ最高経営責任者は「高性能半導体の需要が引き続き堅調だ」と述べた。 非製造業は全体で1.7%の減益だが、「電気・ガス」を除けば9.1%の増益だった。JR東日本は訪日客の鉄道利用増加などで純利益が19.4%増の1397億円。海運は米国の底堅い需要や中東情勢の緊迫化を背景にコンテナ運賃が上昇。日本郵船、川崎汽船、商船三井の3社合計で2.1倍となった。 ◇円相場、どちらに 来年1月にはトランプ政権が発足する。法人税減税や関税引き上げ、環境規制の緩和を掲げ、バイデン現政権の政策から方向転換する見通しだ。トランプ氏は円安・ドル高を批判しているが、大規模な財政出動はインフレ再燃と米金利上昇を招き、円安圧力が強まるとの見方が市場には多い。 円安は日本の輸出企業には追い風となる。逆に、輸入コスト上昇が収益圧迫につながるニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は「トランプ氏の下では円安になるのか円高になるか見通せない」と戸惑いをあらわにした。 ◇純利益が増減した主な業種 業種 前年同期比 【減益】 電気・ガス ▲42.1% 精密機器 ▲36.7% 輸送用機器(自動車など) ▲30.2% 鉄鋼 ▲30.2% 【増益】 海運 2.1倍 証券・商品先物取引 77.5% 医薬品 68.0% 陸運業(鉄道、運送など) 21.3% (注)▲はマイナス