広島の道路陥没で「すべてが崩れた」 共同住宅が被災した30代女性、不安と虚無の1カ月
けが防止で土足のため、思い入れ深い寝具を踏みつけざるを得なかったのはショックだった。仕事をしていた頃に奮発して買った20万円のムートンシーツ。領収書は残っていないが、補償してもらえるのか気がかりだ。
■将来への不安
持ち家や現場周辺で事業をしている人もおり、「自分だけが大変なわけではない」と女性。しかし、一方的に被害を受け、精神的なダメージはただでさえ大きいのに、さらなる不利益を被るとなると気持ちが沈む。
今はJVが用意した市内のホテルに避難している。目立った変調こそないものの、たまに子供が「お家に帰る」とごねることもある。いずれは別の市営住宅に移らなければいけない。
住んでいた市営住宅から現在通う保育園までの間に、小学校があり、ハンディを抱える子供でも「通学路は覚えられる」と安心していた。就学相談も済ませ、支援学級に進学する手はずだった。
事故のせいで全てが崩れた。学区が変われば、環境の変化に弱い子供がパニックに陥るかもしれない。病気のため自身にも日々、気分の浮き沈みがある。将来を案じ、不安が襲う。
不信感がぬぐい切れないのは、市の対応という。10月21日現在で37世帯、68人が避難を余儀なくされた事故でも避難者の対応を、専用窓口を設けるJVに丸投げしているように映る。
「市には、工事発注者としての責任の重さを自覚してほしい。率先して一人一人のニーズをきめ細かく聞き取るべきなのではないでしょうか」。突然日常を奪われた市民の切実な声だ。(矢田幸己)