タイ中銀元総裁らが政治介入リスクに警鐘、理事長人事が延期
Kitiphong Thaichareon [バンコク 4日 ロイター] - タイ中央銀行の独立性を巡り、政府との間で不協和音が続いている。セタプット総裁の任期満了を2025年9月に控え、中銀の次期理事長選出を巡って総裁経験者らは政治介入リスクに警鐘を鳴らしている。 中銀は今年10月、インフレ目標は維持したものの、政策金利は予想外に引き下げたばかり。タクシン元首相の次女ペートンタン氏が率いる新政権は昨年発足後、中銀と対決姿勢にあり、繰り返し利下げとインフレ目標の引き上げを求めてきた。 ペートンタン氏は首相就任前、中銀の独立性は経済問題解決の「障害」と言い切っていた。 政府は金融政策委員の選出を担うパネル(審議会)を率い、次期総裁選びにも関与する中銀理事長の人事で、セタプット中銀総裁を厳しく批判する与党支持者のキティラット元財務相を候補に指名した。 しかし、総裁経験者4人と複数の有力エコノミストは1日、公開書簡で「深刻な懸念」を表明。政治的な理事長人事は長期的な経済の安定を成長に深刻なダメージを及ぼす可能性があると指摘した。 これを受けて中銀は4日、理事長の選出に当たる独立委員会(7人構成)が会合の延期を発表。会合は11日に開かれる見通しだ。 ピチャイ財務相は「新しい候補者提案は可能だ」と述べた上で、理事長の権限は限られていると付け加えた。 こうした動きとは別に中銀は4日、6月の国際決済銀行(BIS)の年次会議におけるセタプット総裁の発言を公表。総裁は「タイ中銀を含め、多くの国で中銀は過去数十年にわたり合理的に業務をしてきたにもかかわらず、独立性は挑戦を受けている」と述べていた。中銀はその後、サイトから発言を削除した。