真藤舞衣子(料理家)「函館・上川大雪酒造『五稜乃蔵』」── 100% Made in Hokkaidoの日本酒。特集:車とともに旅に出よう。
旅の季節がやってきた。西へ東へ、国境さえも越えて、車はどこまでも私たちを運んでくれる。かつて、若きジェントルマンは未知なる世界へ、見知らぬものと出会い、自身を高めるために旅に出た。車を相棒に、グランドツーリングへと出かけよう。料理家の真藤舞衣子とグルメの注目スポット、函館に向かった。 【写真を見る】酒蔵の様子。
北海道といえばビールの印象が強いけれど、じつは日本酒づくりも盛ん。いえ、盛んだった、と言うべきだろうか。昭和初期には150軒余あった酒蔵が一時、11蔵まで落ち込んだが、現在は16蔵まで復活。そのうち3蔵が上川大雪酒造の製造場だというから、北海道の日本酒における上川大雪酒造の勢いたるや推して知るべし、というところ。 2016 年に三重県で休止していた酒造会社を北海道上川郡上川町へ移転させて誕生した上川大雪酒造は、いままで酒蔵のなかった土地に、その土地の水と米を使って酒をつくることで6次産業化し、地域創生を図る意欲的な酒蔵なのだ。 「普段から『上川大雪酒造』さんのお酒が好きでよく飲んでいます」という真藤が訪れたのは函館市内に21年に誕生したばかりの「五稜乃蔵」。上川町、帯広市に次ぐ上川大雪酒造としては3つめの製造場で、函館市内としてはじつに54年ぶりの酒蔵となった。 通常は入れない酒造エリアに足を踏み入れた真藤の第一声は「意外にこぢんまりしていますね」。大きな仕込みタンクを使わず、手づくりの伝統的な手法で仕込むもろみから生まれるのは、米の旨みと甘みが素直に伝わる純米、純米吟醸、純米大吟醸酒だ。 その酒を酒蔵に付設された直営ショップでさっそくテイスティング。さっき「この後は運転を代わってね」と言っていたのはこのためだったのか。ちゃっかりしてる(笑)。 「日本酒の原料は水と米だけですが、そのどちらも地元で調達しているこのお酒はまさに函館という地を表現しているもの。そう思いながら飲むとなおさら美味しく感じます。それに日本酒は製造過程で出る酒粕にも栄養がたくさんあって、料理にもいろいろ使えるんです。甘酒でしょ、魚や肉の粕漬けでしょ、それから石狩鍋......」 おっと、止まらなくなりそうなのでこの辺でおつもりとしておこう。 ■上川大雪酒造 「五稜乃蔵」 住:北海道函館市亀尾町28-1 TEL:0138-84-5177 営:10:00~15:00 休:月 https://shop.kamikawa-taisetsu.co.jp ■真藤舞衣子(しんどうまいこ) 料理家。会社勤務を経て1年間京都の禅寺で生活、パリのリッツ・エスコフィエでディプロマ取得。主に発酵料理を得意とし、和洋中、スウィーツ、パンなどの幅広いレシピで人気。主著に『和えもの』『はじめてのサワードゥ ブレッド』『発酵美人になりませう。』など。
文・秋山都 写真・山田晃 イラスト・尾黒ケンジ 編集・岩田桂視(GQ)