廃虚見える岩手の元スキー場 バックカントリーで再興 課題は安全対策と自然保護
岩手県八幡平市にかつて、鉱山労働者向けアパートの廃虚が見渡せる一風変わったスキー場があった。経営不振のため、10年前に閉鎖となったが、近年、自然の雪山をスキーやスノーボードで楽しむ「バックカントリー」の「穴場」として注目されている。バックカントリーは特に外国で人気が高く、八幡平市は地方再生の起爆剤にと期待を寄せる。だが、ガイドらからは安全対策や自然保護を心配する声も聞かれる。集客か、安全か--。現場を訪ねて考えた。
閉鎖後も「穴場」として注目
八幡平のスキーエリアは、今でこそ上質のパウダースノーが楽しめる手つかずの雪山だが、かつてはリフトが設置された一般的なゲレンデスキー場だった。県や市が出資する第三セクターが1960年代に開業。バブル期のスキーブームに乗ってにぎわったが、その後客足は遠のき、2007年には閉鎖を余儀なくされた。
だが、閉鎖後も一部の愛好家は通い続けた。彼らは自力で山を登って滑走。知る人ぞ知るバックカントリーの「穴場」となっていた。 そんな中、バックカントリー自体の人気も各地で高まってきた。ふかふかのパウダースノーの中を滑る浮遊感や森や林を縫うように滑る解放感などがその秘訣だ。北海道のニセコや長野県の白馬エリアなどではいち早くバックカントリーを楽しむ人たちが増え、オーストラリアや欧米からも愛好家がやって来るまでになった。
市は観光振興に期待
バックカントリーブームにあやかろうと、八幡平市も今シーズン、エリアを国から借り上げ、バックカントリーができる場所として再興に着手した。
その第1弾として始まったのが、キャタピラー雪上車(CAT)の導入だ。地元のガイド会社数社が共同で運行する。CATで雪山をある程度まで登れば、自力で登らなければならない時間と労力を軽減することができる。また、滑降エリアの上には樹氷地帯があり、CATを使った鑑賞ツアーも検討されている。「CAT導入を市全体にとってウィンターシーズンの目玉にしたい」。市商工観光課の担当者はそう意気込む。CATが起爆剤となってここに客が集まれば、山麓の飲食店や宿泊施設はもとより、市内の別のスキー場にも波及効果があるのでは、と担当者は話す。