廃虚見える岩手の元スキー場 バックカントリーで再興 課題は安全対策と自然保護
眼下に広がる廃虚に思うこと
ところで、このスキーエリアの麓には、産業遺産がある。東洋一の硫黄鉱山と呼ばれた「松尾鉱山」の跡地だ。最盛期には4500人近くの労働者がおり、その家族らも含めて約1万5千人が暮らしたという。当時は盛岡市でも見られなかった鉄筋コンクリートのアパートが立ち並び、水洗トイレも導入されていた。標高千メートル付近にあり、「雲上の楽園」とも呼ばれていた。 1970年代に入って閉山となり、アパート群は廃虚として残った。一方で、跡地からは強酸性の水が流出し、今も年数億円をかけて専用施設で中和処理を続けている。
同エリアからはこのアパート群が見える場所もある。きらきらと舞うパウダースノーの雪山から見える廃虚が、私には今後スキーエリアをどうしていくかの教訓のようにも思えた。にぎわいの復活と自然保護と、どう折り合いを付けるのか。そして、一時のブームに終わらせず、このスキーエリアをどう発展させるのか。関係者の知恵に期待したい。
この記事は、復興庁の「新しい東北」情報発信事業として、日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が実施した東北ローカルジャーナリスト育成事業の受講者による作品です。執筆:宮城有沙
宮城有沙