店主がん再発で57年の歴史に幕 夫婦二人三脚の町中華 最後の一日に密着
夫婦二人三脚で先代からの味を守り続ける町中華。店主のすい臓がん再発を理由に、57年の歴史に幕を閉じることになりました。 【画像】名物は「五目チャーハン」「うま煮そば」 味はいつでも夫婦でダブルチェック 57年の歴史に幕
■先代の味守り半世紀
東京・文京区の春日駅近くにある町中華の老舗「ラッキー飯店」は、開店の10分前にもかかわらず、20人以上の客が並んでいます。 常連客 「子どものころから、ここの中華料理を食べて育ってきた。世界で一番うまいです、ここのチャーハンが」 「日本人の口に合う町中華の名店みたいな」 こだわりの味で地元の人たちの舌を満足させるのは、大将の菅家義和さん(69)。そして、店を支えてきた妻の昌美さん(65)です。 開店と同時に、あっという間に店内は満席となります。 数あるメニューの中でも特に人気なのが、パラパラの焼き飯の頂上にエビとカニが鎮座した「五目チャーハン」。そして、たっぷりの野菜に甘酸っぱい餡をまとった「うま煮そば」です。常連客は名残り惜しそうに、料理を堪能します。 常連客 「おいしいです」 ラッキー飯店がオープンしたのは57年前(1967年)。先代である父・清美さんが始めました。ユニークな店の名前も、先代が決めたものです。 義和さん 「(テナントに)うちが入る前に、ラッキーというスナックがあったんです。それをそのままいい名前だから、看板も『スナックラッキー』を『中華ラッキー』にすれば済んだ話なので、そうしました。その当時、目立って良かったです」 2代目の義和さんは18歳の時から店に立ち、以来50年、その味を守ってきたのです。 昌美さん 「先代から引き継いだ時も『味は変えられない』ということで、主人はかなり大変な思いをしたと思います。昔から知っている人はいろいろ言いますからね」 それでも大将は、そんな苦労があったことを微塵もみせません。 義和さん 「たいしてない、『おいしく作ろう』ぐらい。でも、昔ながらのラーメンだから、それを変えてはいけないなと。味を変えたら違うラーメンになるし、違うチャーハンになる。それは、これを食べようと思ってくる人にとっては嫌でしょ」 そんな味にうるさい常連客に愛されてきた理由。それは厨房(ちゅうぼう)をのぞけば、すぐに分かります。 料理の味はその都度、夫婦でダブルチェック。ずっと続けてきた2人のルールです。 義和さん 「だんだんしょっぱくなっていくんですよ」 忙しい厨房で注文を整理する女将は、この店の要です。 「2人の掛け合い」も、店の名物の1つです。これも「1秒でも早く提供したい」という思いがあればこそ。 常連客 「プロ意識がすごいです。忙しい中でもラーメンとギョーザ、同じタイミングで出すよう調整して」