非正規公務員の雇用は不安定、「専門性の軽視」「身分差別」の問題も… 労働団体が「会計年度任用職員」制度の問題を訴え
9月11日、「なくそう!官製ワーキングプア」集会実行委員会と「公務員非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)」は、非正規公務員の雇用の状況に関する複数の調査の結果を報告する記者会見を開いた(東京都)。
会計年度任用職員の「3年目公募」問題
2020年に地方公務員法が改正され、臨時職員や嘱託職員と呼ばれる非正規職員に代わる「会計年度任用職員」の運用が始まった。 従来、非正規職員の採用や待遇は地方自治体ごとに独自に定められており、条例で定められていない運用も多々あった。会計年度任用職員制度は、この状況を是正して、全国的に非正規職員の採用や待遇を統一・適正化する目的で導入されたもの。 会計年度任用職員は、通常、会計年度(4月1日から翌年3月31日)に合わせて1年間の任期で雇用される(職種によっては1年より短い任期の場合もある)。また、初回の雇用は公募採用となるが、勤務実績などが認められた場合には、公募なしに再採用されて、次の1年間も勤務することができる。 法律上は、再採用の回数に限度は定められていない。しかし、総務省が自治体に向けて出している会計年度任用職員制度の『会見年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル第2版』には「再採用は2回までとし、3年雇用したらいちど雇い止めにして、再度雇用するためには改めて公募しなければならない」(「3年目公募」)という旨が通達されていた。 このため、2022年度末には、採用されてから3年目の職員が大量に雇い止めされる「3年目問題」が懸念されていた。 なお、2024年6月、人事院は国の期間業務職員の再採用における「3年目公募」のルールを撤廃。これを受け、総務省も前記マニュアルを改正し、現在は「3年目公募」の記載を削除している。
多くの地方自治体が非正規職員の人事情報を把握せず
会見では、「なくそう!官製ワーキングプア」集会実行委員会が首都圏106自治体に行った、2022年度末の「大量離職通知書提出」などに関する情報公開請求の結果が報告された。 労働施策総合推進法27条と関連省令では、地方自治体で30人以上の離職者が発生する場合、その1か月以上前に、自治体の首長は職業安定に関する機関に通知する義務を負っている(知事は都道府県労働局、市町村長はハローワークに通知)。 情報公開請求の結果、首都圏で2022年度末に大量離職通知書を提出していた自治体の総数は50。そのうち6割の自治体は、離職者の内訳など基本的な人事関係情報を把握していなかった。 また、会計年度任用職員制度の公募や選考・採用などについて、多くの自治体では各課ごとに対応を任せており、人事当局が集約を行っていない。そのため、法律や省令では作成保持すべきとされている情報についても「作成していないため不存在」と回答する自治体があったという。 さらに、総務省のマニュアルでは、雇い止めが発生した場合には、対象の職員へ十分な説明を事前に行い、適切な雇用保障や再就職支援を行うことが定められている。しかし、マニュアルで定められた対応を行っている自治体はほぼ存在しないことも明らかになった。