「神の子」から「神童」へ託された言葉。那須川天心の決意とKID氏への思い
堀口は、5月にイアン・マッコールを一撃で秒殺しているが、「距離やフェイントで相手を騙すことが得意な選手。みんな距離に騙されちゃっている。距離に入っているようで入っていなかったり、入っていないようで入っていたり、というテクニックがある。マッコール選手は、ただ前に詰めただけ。僕は(今回)詰めるまでのプロセスをしっかりやってきた」と、自信をのぞかせた。 私生活では食事面にメスをいれた。バランスや、食べる時間帯や間食などに注意しながら自己管理。その結果「体重が減ってしまったんですが」というほどの効果も。現在の体重は、61キロ。58キロ契約だから減量によるコンディションミスの心配もない。 8月下旬から行ったシンガポールでの合宿を「堀口選手に似たタイプもいなかった」との理由で1週間で切り上げて堀口のベースにある伝統派空手の現役チャンピオンクラスの選手とのスパーも取り入れてきた。 「本当に速くて。堀口さんより全然速い。伝統派(空手)の人はバーンと当てるわけじゃなく、スピード重視で打っているから速くなるのもあるのですが、凄くいい練習ができた。入り方のパターンだったり、ここにいたらヤバいなってところだったり、それを知っておくと知らないでは、全然違う」 堀口が学んだ二瓶空手には独特の連打もあるが、「連打はキックボクサーのほうが打ってくる。入り方は伝統派(空手)ですけど、打ち合いの間合いでは、キックボクサーというイメージをしている。僕のイメージ力は強いので、そこは大丈夫」という。堀口の距離とタイミングのバックボーンを丸裸にして対処法を身につけたのである。まだ使用グローブも含めて細かいルールは最終決定していないが、「3分5ラウンドでも3分3ラウンドでも15分でも関係ない。倒すだけ」と隙はない。 その上で勝負のポイントを「ファーストコンタクト」だと言った。 「それでKOということじゃなく(堀口の)攻め方(を知る)というか、僕も用意しているものが、色々とあるので、探り探り試しながら、そこの反応。お互いに対応力があるので、そこで見切ったり、相手の呼吸を読んだり。今回は呼吸を読むことを重視している」 “呼吸を読む”……。 真剣勝負、一瞬で生死が決する“もののふ”の果し合いの極意である。 おそらく天心のパンチやキックが、とても届かないポジションから、堀口は、さまざまな仕掛けをしながら、飛び込むタイミングを計ってくる。そこにカウンターで対応するのか、それとも、それ以上のスピードで対応して、次なる展開にもちこむのか。天心には、秘策が用意してあるらしい。 罠にはめて一発で仕留めるのか、それとも……。